7月24日、改正皇室典範が公布された。施行は10月24日である。皇室史に詳しい島田裕巳さんは「改正を主導した自民党の麻生太郎副総裁は、本来解決すべき重要な問題の処理をおろそかにしてしまった」という――。
2016年6月、横浜・センター北駅前で街頭演説をする自民党・麻生太郎氏
2016年6月、横浜・センター北駅前で街頭演説をする自民党・麻生太郎氏(写真=Pollyanna1919/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

麻生副総裁が改正議論で見落としたこと

人間、一つのことばかりを考えていると、他のことがおろそかになる。

今回、皇室典範の改正を主導した自民党の麻生太郎副総裁には、まさにそれが当てはまる。

自分の親族を将来の天皇にするという野望を実現することにすべての力を注いでしまったがために、本来解決すべき重要な問題の処理をおろそかにしてしまったのだ。

それだけではない。その結果、麻生氏が最も嫌う「女性天皇・女系天皇」誕生の道をかえって切り開いてしまった。

それは、どういうことなのだろうか。今回はそのことを考えてみたい。

今回の皇室典範改正を支持するのは保守派の政治家であり、その支持者である。彼らは男系での継承に強くこだわってきた。そうした人々の前提となる考え方は、秋篠宮家の悠仁親王までの皇位の継承は「絶対に揺るがせにしてはならない」というものである。

現在、皇位継承の資格があるのは3人の男性皇族で、1位が秋篠宮、2位が悠仁親王、3位が上皇の弟である常陸宮である。ただ、常陸宮は90歳と高齢であり、将来皇位を継承する可能性はほとんどない。現実には秋篠宮と悠仁親王の2人に絞られる。

「皇太子」不在の令和時代

ところが、この2人の立場は、皇位継承という観点からすると、かなり曖昧で、微妙である。次に天皇に即位する可能性のある皇族は「皇太子」になるはずだが、秋篠宮は皇太子ではなく「皇嗣こうし」である。「皇」は天皇を指し、「嗣」は継ぐという意味だから、次に天皇に即位する皇族ということになる。

そうであれば、秋篠宮は皇太子でよいのではないか。そう考える人も多いはずだ。歴史的には、天皇の弟が皇太子になった例はいくらもある。

皇太子という存在には特別なものがある。平成の時代が続く間、現在の天皇は皇太子として活躍し、その動向が注目された。皇太子の結婚には世間の目が注がれ、その「ご成婚」は一大イベントとなった。それは、昭和時代の上皇についても言える。

それも、皇太子が未来を感じさせる存在であり、次の時代において新しい社会が訪れることを予感させるものだからである。天皇が現在の日本の「象徴」であるとするなら、皇太子は未来の日本の「象徴」なのである。