※本稿は、川口マーン惠美、ヴィズマーラ恵子『誠実な日本人が信じるドイツ神話にイタリア幻想』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
日本では語られないメローニ首相の素顔
【ヴィズマーラ】メローニ首相とその政権の価値については拙著『イタリアからの警告』(WAC BUNKO)で詳しく書きましたが、ここではその実態について紹介します。
イタリアの政治は、日本だと「極右がどうの」って堅苦しく語られがちですけど、現地の実態はもうドロドロのエンターテインメントなんです(笑)。特にメローニ首相の戦いぶりなんて、映画よりよっぽど面白い! いくつか強烈なエピソードを紹介します。
まず、イタリアでは国のトップのプライベートも容赦なく晒されます。メローニ首相のパートナー(娘の父親)だったアンドレア・ジャンブルーノ氏は民放のTV司会者だったのですが、裏で女性出演者を卑猥な言葉で口説いていた会話を、なんと「音声さん」に拾われて「生放送」で流されてしまったのです。
これを知ったメローニ首相は、即座にSNSで「この人とは、終わらせます」とスピード破局を宣言しました。
さらに泥沼なのはその後です。この元パートナーが、なんと連立与党「同盟(レーガ)党」の有力議員アンドレア・クリッパ氏の「元交際相手」で、元女優のフェデリーカ・ビアンコさんと交際を始めたと報じられました。
ローマ教皇を使って主張を正当化
メローニ首相が外交で忙しく飛び回っている時に娘を彼に預けたら、自分の娘がその「新しい女」と楽しそうにしている姿をパパラッチされてしまったのです。
これに激怒したんでしょうね、「私のお腹を痛めた娘を、あの女に面倒を見させるなんて冗談じゃない!」とばかりに、学校を休ませてまで娘を海外出張に連れ回すようになったのです。全部バラしてしまうメディアもすごいですけど、彼女の行動力も凄まじい。
フランスのマクロン大統領との関係は複雑です。実は、2023年5月の広島G7サミットで、G7首脳たちは「安全で合法的な中絶へのアクセス」を含む包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)への完全なコミットメントという文言を宣言書に記載して合意していました。
ところが、2024年6月にイタリアがG7議長国を務めたプーリア・サミットで、メローニ首相はその重要な合意内容のうち「中絶」に関する具体的な文言を削除してしまったのです。フランスのマクロン大統領とカナダのトルドー首相は「前年の合意を無視するのか」と強く抗議しました。
するとメローニ首相は、なんと、削除を正当化するために、サミット史上初めて「ローマ教皇」をゲストに呼んだのです。
ご承知の通り、カトリックは中絶に断固反対しています。だからこれは「教皇に直接語らせて全員を黙らせる」というメローニ首相の力技です。
晩餐会でメローニ首相がマクロン大統領を「ギッ」と睨みつけている写真が世界中に拡散されましたが、裏にはそんな大喧嘩があったわけです。

