高市首相が目指す、今国会中の皇室典範改正の動きが本格化している。衆参両院は、皇族数確保策に関する「立法府の総意」を、6月前半に向けて取りまとめていく見通しだ。皇室史に詳しい島田裕巳さんは「この動きの最大のキーパーソンは自民党の麻生太郎氏であり、そこには今は亡き2人の存在が強い影響を与えている」という――。

皇室典範改正と「国力研究会」の誕生

現在国会で進んでいる皇室典範改正の問題において、もっとも重要人物になっているのが自由民主党の副総裁、麻生太郎氏である。

高市早苗首相が誕生したとき、真っ先にこの問題については麻生氏に一任された。それも、一つには麻生氏の実妹が三笠宮寛仁ともひと親王妃家の信子妃であり、皇室とは親戚関係にあるからである。

しかし、それだけではない。

歴代の首相経験者のなかで、現在でも議員を続けているのは麻生氏のほかに、岸田文雄氏と石破茂氏しかいなくなった。しかも、岸田・石破両氏が首相だったのは2020年代になってからであるのに対して、麻生氏が首相になったのは2008年のことである。キャリアが違うわけである。

麻生氏が自民党のなかでもっとも影響力を持つ政治家であることは間違いない。実際、5月21日に、自民党の国会議員が集まった「国力研究会」という会合が開かれ、それは高市首相の再選のためと言われたが、筆頭発起人で最高顧問は麻生氏だった。

この研究会には、自民党の所属議員のうち8割超が集まってしまった。それでは一部の議員による研究会を開く意味がなくなったとされるが、それも麻生氏の仕掛けた試みに乗り遅れたら冷遇されるというおそれを、自民党の議員が抱いているからである。

「国力研究会」の初会合に出席した自民党の麻生太郎副総裁=2026年5月21日、国会
写真提供=共同通信社
「国力研究会」の初会合に出席した自民党の麻生太郎副総裁=2026年5月21日、国会

“大事業”を「花道」にしたい練れ者

麻生氏は1940年9月20日の生まれで、現在85歳である。現役の自民党議員でそれに次ぐのが参院議長である山東昭子氏の84歳である。その下になると、71歳の逢沢一郎氏になってしまう。引退する議員が多く、間がごそっと抜けてしまったのだ。

この年齢構成からしても、麻生氏が自民党のなかで重きをなすのは自然な流れである。山東氏は、参院議長になる際、自民党の会派からは抜けているので、なおさらである(衆院議長だと党籍を離れる)。

85歳という年齢から考えると、麻生氏が次の衆院選に出馬することはないであろう。ということは、彼に残された現役政治家としての時間はかなり限られている。すでに16選を果たしており、残された時間は2、3年である。

本人は当然、そのことを意識しており、「皇室典範改正」という大事業をなしとげてから政界を引退し、それを花道にしたいという思いを抱いているに違いない。

だからこそ、皇室典範の改正になみなみならぬ意欲を示しているわけだが、見方を変えれば、そうした個人の功績を後世に残すために、皇室のあり方に重大な影響を与える皇室典範の改正がなされてよいものだろうか。そうした疑問が湧いてくる。

しかも、麻生氏は2人の死者に突き動かされて、その方向にむかっているのである。