国民が「愛子天皇」を望む本当の理由
「愛子天皇待望論」が高まっているという。
皇室典範の改正議論が進む中、高市早苗首相は一貫して女性天皇に否定的な姿勢を崩していない。だが、報道各社の世論調査を見れば、女性天皇への賛成は70~90%と極めて高い。愛子内親王個人への国民的敬愛と好感度がその数字を支えていることは明らかであろう。「聡明で、国民に寄り添う愛子さまに次の天皇になっていただきたい」という、純粋かつ素朴な待望論はごく自然だ。
しかし、この熱狂を俯瞰したとき、有史以来、長い歴史を誇る皇室制度の永続性においては、極めて危うい未来が透けて見える。
“愛子天皇”への支持は果たして、少なくとも1500年以上続くとされる皇室制度の形を大きく変えうるという自覚を伴うものなのか。それとも単に「愛子内親王」という個人のキャラクターに対する人気投票なのか。この区別を曖昧にしたまま、現代世俗の基準で皇位継承ルールを変えることは、結果として有史以来の天皇の権威の源泉を自ら否定するような、取り返しのつかない事態につながりかねない。
天皇の「定義」が崩壊する深刻なリスク
「一見、前時代的とも思われる男系継承が、皇室の歴史上なぜ重要視されてきたのか。この疑問に対し、正しく答えられる人は、多くないのではないでしょうか」
こう語るのは、皇室制度に詳しい九州大学の施光恒教授だ。もし「愛子天皇」を念頭に、皇位継承を認められる形で女性宮家が創設され、愛子内親王が一般人と結婚して子を持てばどうなるか。国民から敬愛される愛子内親王が即位して「愛子天皇」が誕生し、今上天皇の直系の孫にあたるそのお子様が育っていったとする――。
「その時の世論が後押しすれば、父方が皇統ではない『女系』となる愛子天皇の子へ皇位継承の道が開かれる可能性はあるでしょう。そして日本国民がその後に直面するのは、想定したくない皇室制度存立の『危険シナリオ』です」(施教授、以下同)
「女系」天皇につながる「女性」天皇の最も深刻な問題は、天皇という存在の“定義”そのものが崩壊するリスクを孕んでいる点だ。政府に提出された説明資料(憲法学者・百地章氏による)では「女系天皇は、2000年近い『皇室の伝統』を破壊するだけでなく、(天皇の世襲を規定した)憲法違反の疑いさえある」との指摘がある。
そもそも、天皇とは神武天皇から続く男系子孫にその継承資格がある「祭祀継承者」であり、その歴史と伝統に権威が宿っていると考えられる。
「この権威に対し、古来より時の政権や権力者は取って代わろうとするより、寄り添い、自身の権力の背景としてきた。現在では『国民統合の象徴』とされるように、時代に則して日本社会が求める役割を担ってきたのが天皇の歴史です」

