物価高が止まらず、不安が増す「老後の家計」。ところが多くの家庭には、“お金を食い潰す無駄”が大量に眠っている。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「特に50代以降は、気づかぬうちに家計を圧迫する“無駄”が加速する。今年の大掃除で真っ先に手放してほしいものがある」という――。
高層ビルの窓の外を見るシニアカップル
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家庭に眠る「かくれ資産」

フリマアプリ大手メルカリが発表した「2025年版 日本の家庭に眠る“かくれ資産”調査」によると、日本全国の“かくれ資産”は、推計約90兆5352億円になるそうだ。これを国民一人あたりに直すと平均約71.5万円となる。

“かくれ資産”とは、ざっくりいうなら1年以上使われずに保管している不要品を、もしメルカリで売ったらいくらになるかという金額を算出したもの。つまり、一人当たり約71.5万円、二人家族なら約143万円相当の「使っていないモノ」を家庭で保管していることになる。

問題は、このかくれ資産総額が年々増大していることだ。2018年に行われた第1回調査では約37兆円、2021年の第2回調査で約44兆円、2023年は約67兆円。今回が91兆円なのだから、7年間で約2.5倍に近い増え方だ。

内訳をみると、「ファッション用品」が33.6%で最も大きな割合を占め、次いで「ホビー・レジャー」が22.2%、「書籍・音楽・ゲーム」が21.2%、「家具・家電・小物」が20.0%、「美容・健康」グッズが2.9%だそうで、特別高額な品ばかりとは言えない。物価高が嘆かれ、節約志向が高まっているというのに、なぜか私たちは年々「使わなくなるモノ」をせっせと買い込んでいるらしい。

「モノと支出」が年金生活を左右する

さらに、年代別にみると最もかくれ資産額が大きいのは60代で、なんと平均で100万7328円。生きている年月が長いほどモノも増えていくのは当然だが、逆に考えればかくれ資産になるようなモノを買わなければ、100万円の半分くらいは節約できていたかもしれない。

なお、今年の大掃除で捨てられそうなモノだけでも全国で約9兆9373億円、国民一人あたり平均約8.9万円になるという。

50代後半から収入が減少し、老後の暮らしが視野に入りはじめると、普段の支出のコントロールが大事になってくる。

稼いでいるのだからと気ままに使っていれば、生活サイズは膨らむばかりだ。その挙句、かくれ資産に計上されるムダなモノばかり買っていては、二重にお金の無駄だ。年金暮らしに突入するまでに「モノと支出を増やさない」ための消費習慣に変えていく必要がある。