「パンパンの冷蔵庫」は要注意のサイン
年金生活に入ると、生活費は現役時代の7割程度に落ちるといわれる。しかし、現役時代と同じように買っていては減るものも減らない。
例えば2024年家計調査から年代別消費支出を見ると、50~59歳では約35.7万円が、60~69歳では約31.1万円と、さほど大きな減額ではない。70歳以上になって約25.3万円と、ようやく現役時代の7割に落ち着く。
なお、勤労者世帯と65歳以上の夫婦世帯を比較すると、食費にかける支出の割合は後者の方が大きくなっている。外出が減り、食べることが楽しみの中心にくるのだろうが、先のかくれ資産ではないが、冷蔵庫の中が食品でぎっしり・ぱんぱんという世帯は少なくないだろう。
それがどんなムダにつながるかは言うまでもない。2023年度の食品ロスの数字を見ると、家庭から発生する量は約233万トンで、事業系の約231万トンと拮抗している。うち、未開封の食品のまま捨てられている量が約4割を占めるという。買ってきて冷蔵庫に入れたまま、気づかず期限切れとなった食品がいかに多いかの表れだろう。
「入れもの」をサイズダウンする
こうした無駄買いを防ぐ方法として、家族が減って年金暮らしが見えてきたところで、冷蔵庫をサイズダウンするのも一案だ。
私たちは、入れものが大きければ大きいほど安心して買い込んでしまう。隙間があればその隙間に押し込む。食べ忘れていた食材を見つけたら、慌てて冷凍庫へと移動する。かくして、冷蔵室もチルドルームも野菜室も、そして冷凍庫も食品でぎっしり、何がどこに入っているのかわからない魔窟になってしまう。
食べきれない量の食品を買ってしまうくらいなら、いっそ入れる容器を小さくすればいい。そこに入る量だけ買う。そして食べきる。それなら食品を買う金額も、捨てて無駄にする金額も、両方減らすことができるだろう。
より効果的なのは、家全体の収納を減らすことだ。着ていない洋服を整理して衣装ケースが空いたら、思い切ってケース本体も処分する。服を掛けていたハンガーも減らす。100均には「収納力を2倍にする便利グッズ」が売っていたりするが、決して手を出してはいけない。そこに入る分しか買わないと決めればいい。
日用品の買いだめにも注意が必要だ。洗剤やトイレットペーパー類のストックが収納庫を占拠してはいないか。「どうせいつか使うのだし」と言い訳しがちだが、数年分に当たるほどのストックをずっと抱えている必要はない。家の中にモノが多いほど空間を圧迫し、私たちにストレスを与えるものだ。家の中が散らかっていたら、収納する入れものを買うのではなく、収まる量まで減らすという発想に切り替えたい。

