イオンは2025年12月、食品スーパーの再編を発表した。流通アナリストの中井彰人さんは「インフレに転換した影響で、大手が有利な状況になった。ここからスーパー業界は寡占化に向かう。イオンの再編はその戦いに備えるためではないか」という――。
イオンが運営する「まいばすけっと」の看板=2025年9月3日、横浜市
写真提供=共同通信社
イオンが運営する「まいばすけっと」の看板=2025年9月3日、横浜市

クルマ社会化をいち早く察知したイオン

流通大手イオンの本社は、現在は千葉市幕張にある。そのため、首都圏の会社だと思っている人もいるかもしれないが、そもそもは三重県四日市市の老舗商店から出たスーパーだ。中部地方から地方ロードサイドに総合スーパー・ジャスコを展開して大手の一角にのし上がった地方企業である。

昭和の時代、総合スーパーが小売の主役に成長したのであるが、その頃のライバルスーパーというと人口の多い大都市圏出身が普通で、ダイエー(大阪)、イトーヨーカ堂(東京)、西友(東京)、ユニー(愛知)、マイカル(破綻した大手、大阪)など、イオン以外はみな大都市出身であった。

そんな地方出身のイオンがスーパーの最大手となれたのは、当時急速に進行していた地方でのモータリゼーションの普及(クルマ社会化)という変化をいち早く察知し、幹線道路沿いに大型のスーパーやショッピングモールを作って、地域のシェアを奪うという戦略を採用したから、と言われている。

イオンVS地域ごとのシェア上位企業という構図

今や地方では、駅前やバスターミナル周辺の中心市街地が衰退して、郊外の大型モールで買物をする時代に移行していることは皆さまもご存じであろう。地方出身のイオンはこうした人流の変化に合わせて、地方の駅前や中心市街地の店を閉めて郊外幹線道路沿いへと引っ越しさせたことで、都市出身のライバルの先手を打って、地方ロードサイドを制覇、そして全国へとシェアを広げることに成功した。

今ではイオンのスーパー事業の営業収益(総合スーパー+食品スーパーの合算)は、6兆6000億円と競合を圧倒する水準に拡大し、業界での競争はイオンVS地域ごとのシェア上位企業という構図になっている。都会出身のライバルだった総合スーパーは、いまやダイエー、マイカルはイオンの傘下に吸収、西友は外資→ファンド→トライアル、ユニーはPPIH(ドン・キホーテ運営会社)の傘下となった。最後まで残っていたのがイトーヨーカ堂であったのだが、昨年ファンドの傘下となり、セブン&アイHDの連結から外れたことは記憶に新しい。

という経緯でトップシェアのスーパーとなったイオンなので、実は首都圏や京阪神といった大都市部においては、決して圧倒的な存在ではなかった。特に首都圏においての存在感は、傘下にしたダイエー、マイカルが関西勢ということもあり、かつてはそれほどでもなかった。こうした大都市圏は地代も高く、好立地の未利用地などないため、簡単に出店してシェアをキャッチアップすることはできない。