個性豊かな鉄道車両はどのように作られるのか。鉄道車両デザイナーの南井健治さんは「鉄道車両はその地域だけを走る交通機関であるだけに、文化や慣習、嗜好、民族性といったものを考慮してデザインされている」という――。
ドイツの新幹線ICEの車内
写真=iStock.com/Christian Ader
ドイツの新幹線ICEの車内

日本と海外の鉄道はこんなに違う

筆者は多くの輸出車両のデザインに携わってきたが、国により地域により車両のコンセプトはそれぞれに大きく異なっていて、ひとつとして同じものはなかった。

同じアメリカの6つの都市、ボストン、ダラス、ニュージャージー、サンノゼ、シアトル、フェニックスのLRVのデザインを担当したが、これもそれぞれが違う。そのデザインもそれぞれの町並みや都市のイメージに合わせてなされているのだ。

ヨーロッパの高速車両であるTGVやICEと日本の新幹線でも大きく異なることがある。それは座席配置である。

TGVやICEでは固定座席であり、必ず後ろを向いて座る人が出てくる配置になっているが、日本では座席が回転して、前向きにすべての乗客が座れるようになっている。今までには固定座席の車両もなかったわけではないが、どの車両も不人気で、後に改造されて、腰掛けが交換されたものが多い。

ヨーロッパの鉄道の原点は馬車

韓国の高速列車KTXはTGVベースであるが、後ろ向きの座席配置が不評で、後ろ向きの人には料金を割引する策が取られたという。

腰掛けそのものを考えれば、向きを変えられる回転式や転換式のものよりも、固定式のものの方が軽量でメンテナンスも少なく、また座面デザインについても制限が少ないために人間工学的には有利なものとしやすい。

一説には、ヨーロッパの鉄道は馬車からスタートしているため、基本的にコンパートメントがメインであると言われている。

そのためか、半分は逆方向でも乗客は何も感じないようである。今では個室の存在は少なくなってきているが、座席配列にはさまざまな向きを設定しているものの、向かい合い配置があるなど、やはりその名残は残っている。