人口減少の時代、鉄道会社のサービスはどうあるべきか。鉄道車両デザイナーの南井健治さんは「黙っていてもお客が電車に乗ってくれる時代ではなくなった。これからは、乗客にどれだけ高い満足感を与えられるかがカギとなってくる」という――。

※本稿は、南井健治『鉄道車両デザインの教科書』(イカロス出版)の一部を再編集したものです。

西武新宿鉄道
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電車にフリースペースが増えている

2020(令和2)年から3年間続いたコロナ禍は、世の中の仕組みを大きく変えた。鉄道もガラガラで駅にも人はいない状態であった。人に会うな、移動するな、密になるな、が声高に言われていたから大量輸送の鉄道は大きな打撃を受けた。

コロナが第2類から5類へとなった後も未だ完全に旧に復しているとは言えない状況と聞く。特に通勤輸送ではリモートワークが定着し、働き方改革とも相まって必ずしも会社に出勤しなくても良くなったことも大きい。

通勤輸送・大量輸送が鉄道の独壇場というこれまでのありようは大きく変化し、半世紀前のような混雑が復活することはあり得なくなった。これは当然通勤電車のデザインにも大きな影響を及ぼす。

現実に、2017(平成29)年、西武鉄道が40000系で「パートナーゾーン」と呼ばれるフリースペースを設け、車椅子やベビーカー、荷物を持った人への対応を始めた。京都市交通局の20系が「思いやりエリア」を先頭車に設け、ここでは伝統産業の展示も行っている。

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写真=Wikimedia Commons
西武40000系の「パートナーゾーン」(写真=SEMISAYAMASHI/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

近鉄の8A系では「やさしば」という名称で、また東武アーバンパークラインの80000系でも「たのしーと」と名付けられたこれまでにないスペースを設けることが発表されている。