2000年から放送されている警察ドラマ「相棒」(テレビ朝日系)は、なぜ長い人気を誇るのか。社会学者の太田省一さんは「主人公・杉下右京がタッグを組む“相棒”のほかに、ドラマを名作たらしめる“もう一人の相棒”の存在が大きい」という――。

※本稿は、太田省一『「相棒」大全 25周年を迎えた傑作刑事ドラマ大研究』(河出新書)の一部を再編集したものです。

「相棒」製作会見
写真=時事通信フォト
人気刑事ドラマシリーズ「相棒」の劇場版第2弾の製作会見に出席した(前列左から)宇津井健さん、小西真奈美さん、水谷豊さん、及川光博さん、小澤征悦さん、(後列左から)六角精児さん、山西惇さん、益戸育江さん、川原和久さん、大谷亮介さん(2010年8月9日)

「相棒」と他の警察ドラマはココが違う

「相棒」の根底にはバディものと警察ドラマという2つの側面がある。そしてその両面がバラバラではなく密接に関連している。その点が、「相棒」という作品をほかのバディものや警察ドラマとは一線を画すものにしている。

その象徴が、「特命係」という卓抜な設定である。刑事ドラマ史上における一種の発明と言ってもいいだろう。

従来のバディものは、特定の部署に属する2人組という設定が多かった。つまり、上司がいる。そのなかで個性豊かな2人が上司の命令を無視した行動をとる。「俺たちの勲章」や「あぶない刑事」でもそうだった。

ところが、「相棒」の場合、杉下右京とその相棒に上司はいない。形式的にいないわけではないが、誰かの命令に従って動くわけではない。

あえて言えば、特命係に最初からいる右京が上司ということになるが、ドラマを見てわかるように右京が「上司」として振る舞うことは基本的にない。あくまで特命係の2人は、捜査に当たる現場のコンビとして行動する。

要するに、特命係という部署は既存の警察組織の埒外にある。捜査権が認められていないというのはそのことを示す意味もある。

警察の中のアウトサイダー

特命係は架空の部署だが、それ自体は刑事ドラマにおいて珍しいことではない。

たとえば、「Gメン」(TBSテレビ系、1975年放送開始)のGメンもそうで、警察官ではあるが、部署や権限にとらわれず自由に犯罪捜査に当たる。

「相棒」の特命係にも同様の側面はある。捜査権がないはずなのに、どこからともなく現れてさまざまな事件に首を突っ込んでは捜査一課の刑事たちから「警部殿~!」と嫌がられ、煙たがられる。

そんなアウトサイダー感が、右京と相棒たちのバディとしての魅力をさらに際立たせる。

そしてその特命係の浮いたポジションが、警察という組織における複雑な権力構造、ひいてはそこに潜む闇を浮き彫りにするための仕掛けにもなっている。