シーズン24まで続く人気ドラマ「相棒」(テレビ朝日系)は、他の刑事ドラマと何が違うのか。社会学者の太田省一さんは「紅茶や落語、クラシック音楽など、幅広い趣味を持つ主人公・杉下右京には、『税金の無駄遣いだ』と毛嫌いしているものがある」という――。

※本稿は、太田省一『「相棒」大全 25周年を迎えた傑作刑事ドラマ大研究』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

舞台挨拶に登壇する俳優の水谷豊(左)と反町隆史
写真=スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト
映画「相棒-劇場版IV-首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断」の初日舞台挨拶に登壇する俳優の水谷豊(左)と反町隆史。=2017年2月11日

ポットを高く掲げて紅茶を注ぐ杉下右京

右京の浮世離れ具合は、趣味の多彩さにも表れている。どの趣味をとっても仕事と同様にとことん突き詰めるタイプ。それゆえ周囲がついていけず、しばしば呆れられる。

時にはその知識が真犯人を突き止めるのに役立つこともあるが、あくまで趣味は趣味なのでそれ自体は実益にまったく結びつかない。

まず、紅茶への偏愛は有名だろう。いつも着ている3つボタンのスーツもそうだが、右京の英国趣味のひとつだ。初期にはコーヒーを飲んでいることもあったが、いまでは紅茶一筋。

ティーポットを高く掲げて紅茶を注ぐアクロバティックなスタイルは、もはやトレードマークである。むろん茶葉のことにも精通している。紅茶の専門店にもよく足を運んでいるようだ。

そこで出会った人物が事件に関わっているということもある。ただどんな相手であったとしても、紅茶への蘊蓄を傾け合うことは無上の喜びのようだ。

落語、チェスからクラシック音楽まで

落語も詳しい。寄席にも足を運ぶ。シーズン1第3話「秘密の元アイドル妻」では、知り合いの落語家(小宮孝泰)を巻き込んだ事件が起こるという流れだった。

鑑識の米沢(六角精児)も同じく大の落語好き。勤務中でも古今亭志ん生の素晴らしさをともに語り合ったり、落語のCD(テープ)を貸し借りしたりする趣味仲間だ。

チェスもある。職場であるはずの特命係の部屋にはおしゃれなデザインの駒とチェス盤が常に置いてあって、誰かと対戦していたりする。シーズン14第5話「2045」では、最先端の人工知能とも対戦した。

神戸尊とは盤を介さず棋譜を暗記して脳内対局をしたことも(シーズン8第8話)。対局の棋譜が事件解決のヒントになったこともある(劇場版第1作)。

ほかにもクラシック音楽(ピアノを弾けたりもする)や絵画など芸術鑑賞、そして読書など、とにかく興味の幅が広い。