右京とコナン・ドイルとの共通点

銀縁のメガネで、英国紳士流のかっちりしたスーツ姿、そしてほとんど表情を崩さない普段の右京は、物事を万事合理的に判断し、対処するタイプの人間に見える。

だが必ずしもそうではなく、合理性だけでは推し量れないものへの強い好奇心を抱いているのがこの場面からもわかる。

そこには、シャーロック・ホームズシリーズの生みの親である作家コナン・ドイルを想起させる面もある。

名探偵シャーロック・ホームズが誕生したのは、19世紀末のイギリス。つまり、世紀末のことだった。当時ヨーロッパでは後にシュペングラーの著書名にもなった「西洋の没落」への危惧が真剣に議論され、退廃気分が世を覆っていた。

犯罪史上でも有名な、次々と女性を襲う「切り裂きジャック」による連続殺人事件が起こってロンドン市民を震撼させたのもこの頃である。

ウェストミンスター通りのビクトリア朝の建物、ロンドン
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ドイルは小説家であるだけでなく、心霊研究家でもあった。降霊術などさまざまな心霊現象を熱心に研究していた。個人の嗜好もむろんあっただろうが、そこにはいま述べた世紀末的空気感の影響もあったはずだ。

実際、当時心霊現象に興味を抱く人たちのサークルは数多く存在した。

右京は推理小説を書いたことがある

右京の幽霊への強い関心という設定も、もしかするとこのドイルとその時代のエピソードにヒントを得たものかもしれない。

ドイルに倣ったのかどうかはわからないが、右京は推理小説を書いたこともある。タイトルは「亡霊たちの咆哮」。シーズン4第8話「監禁」のなかに登場する。内容は、第二次世界大戦の敗戦直前に旧日本軍の秘密結社が隠したとされる金塊をめぐるミステリー。

驚くべきは、これを中学生のときに書いたことだ。大学の同人誌にも掲載され、早熟の天才として一部で話題を呼んだ。

画面でチラっと冒頭のところが映されていたが、とても中学生が書く文章とは思えない大人びたもので、後の右京を彷彿とさせる(この小説が掲載された同人誌は、シーズン24第11話に再び登場する)。

ちなみにこの回は、「都民ジャーナル」という雑誌で右京が警視庁の「和製シャーロック・ホームズ」として紹介されたところから始まる。