「太陽にほえろ!」銃に弾を込めなかった刑事
実は右京が笘篠を知っていたのは、彼に「致命傷を与えず血も流さないスタンガンのようにショックを与えるだけの安全で安心な銃」ができないか相談したことがあったからだ。そこまでやろうとしたことに、右京の銃に対する嫌悪感の根深さが伝わってくる。
「相棒」に限らず、刑事ドラマには銃をモチーフにした回が必ずある。そしてそこには、「刑事とはなにか」という本質的な問いを含んでいることも珍しくない。
「太陽にほえろ!」のゴリさんこと石塚誠(竜雷太)は、警視庁でも指折りの銃の名手。だが、携行している銃に弾を込めていない。銃には殺傷能力があり、意図しなくても誰かの命を奪ってしまう可能性がある。
それはゴリさんにとって許されないことだ。だから弾を込めない。このあたりは、右京の考えかたにも近い。
古畑任三郎も銃を持たなかった
「古畑任三郎」シリーズ(フジテレビ系、1994年放送開始)の古畑任三郎(田村正和)は、もっと徹底している。ドラマ自体が純粋な推理劇だからということもあるが、古畑も銃を撃つことはないし、そもそも銃を持っていない。
そこには、古畑なりの確たる理由がある。
第1シーズン最終話で、古畑は上司の小暮(菅原文太)に「人を裁く権利は我々にはありません。我々の仕事はただ事実を導き出すだけです」と毅然とした態度で語る。実は小暮は、自分の孫娘を殺した男を銃で殺していた。
最後、古畑の推理によってアリバイを崩された小暮は、「納得がいったよ。君に拳銃は必要ない」と言う。その言葉に古畑は、「警視、最高の褒め言葉です」と喜びをあらわにする。
銃を使わないという信念において、古畑と右京はいわば同志だ。もちろんその前提には銃にも劣らない武器になる秀でた推理力の持ち主だということがある。しかし、推理力があったとしても、銃を持ち、撃つことを選択することもできる。
その点、銃を拒絶する2人が掛け値なしの理想主義者であることに変わりはない。たとえ相手が犯罪者であったとしても、人を動かすのは言葉であり、その裏側にある強い思いなのだ。


