日経平均株価は最高値更新から、わずか1カ月で大きく下落した。値動きに振り回されないためには、数字を動かす仕組みを知っておく必要がある。経済指標を読み解くプロの2人に、投資に役立つ数字の見方を聞いた。

バブルを見抜くにはTOPIXと比べてみる

【吉野】「日経平均が最高値を更新」と報じられているのに、自分の持ち株は全く含み益が出ていない。株価の「平均」が上がっているはずなのに、実感が持てないのはなぜなのでしょうか。

そもそも、日経平均は市場全体を映す鏡ではありません。東京証券取引所に上場している約3900社のうち、代表的な225銘柄を抜き出してつくられた指数です。

しかも、指数への影響力は銘柄によって大きく違います。1株当たりの株価水準が高い銘柄ほど、指数を大きく動かします。こうした株価の高い銘柄は「値がさ株」と呼ばれます。よく言われるのは、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリングの4社。こうした値がさ株が大きく値上がりすれば、値下がりした銘柄のほうが多い日でも、日経平均だけはプラスで終わる││こういうことは、よく起こっています。

日経平均が最高値なのに自分の持ち株が上がっていないとしても、「好景気なのに相場で負けてしまった」とネガティブに捉える必要はありません。単に値動きの激しい大型株を持っていなかった、というだけのことです。

相場全体が好調なのかを知りたければ、TOPIX(東証株価指数)を見るほうがよいでしょう。東証に上場する銘柄を広くカバーしていますから、こちらのほうが実感に近いはずです。

両者を比べる指標もあります。日経平均をTOPIXで割ったNT倍率です。16倍を超えると日経平均が相場全体と比べて過熱していると言われます。

一時は18倍近い水準となっていました。グローバルに半導体・データセンター関連の企業が景気の牽引役になっていて、実際の業績が良いのですから、それらの銘柄の比重が高い日経平均が一時的にも上がるのは当たり前です。その後、市場も過熱感を織り込み、日経平均は下落に転じました。現在は15倍台に落ち着いています。

こうした値動きを見ればおわかりいただける通り、「半導体関連だから」「データセンター関連だから」という理由で投資をするのはお勧めしません。テーマで銘柄を選ぶと、「次に何が注目されるか」という人の心理を読む勝負になり、たいてい後追いになってしまうからです。株価が上がった銘柄に後から飛び乗っても、すでに大きな買いは過ぎていることが多い。繰り返しになりますが、重要なのは成長期待があるかで判断をすることです。

専門家も気づかなかった半導体関連の利益成長

【藤代】今年の日経平均は5万1832円で始まり、一時は7万2366円を記録しました。わずか半年で40%近い上昇です。この数字だけを見ると、「バブルではないか」と身構える方は多いのではないでしょうか。

40%という変化率だけを見て「上がりすぎだ」「バブルだ」と身構えるのは早計です。大事なのは、その40%が何によって動いたのか、中身を分けてみることです。変化率の大きさに驚くのではなく、その大きさを何が生んだのかを確かめる。そこを見て初めて、この上昇が地に足のついたものなのか、宙に浮いたものなのかがわかります。

(構成=本誌編集部)