対話型AI「Claude」を開発したAI大手・米アンソロピックの警告が反響を呼んでいる。安全研究のトップが、AIが「全人類を滅ぼす」可能性は今後10年以内に10%以上と表明したのだ。一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんは「善き創造を生むか、悪しき破壊をもたらすか、AIの未来を決めるのは人間だ」という――。(第1回/全5回)
※本稿は、野口悠紀雄『AIは最強の味方で、最悪の敵』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「先生」としてのAI
試験を受ける場合、目標は明確だ。それは、「良い成績を取ること」、あるいは「合格すること」だ。この目標自体について、議論の余地はない。
期末試験であれ、入学試験であれ、資格試験であれ、多くの標準的な試験において受験者に求められているのは、「出題された問いに対して、正しい答えを書くこと」だ。
試験問題に事実の誤認や誤字脱字があった場合には指摘することに意味があるが、試験問題の妥当性を論じて「この問いは不適切だ」と主張しても、評価対象にはならない。「批判的態度を評価されて点数が上がる」ということは、標準的な試験では、普通はないのである。
受験者に求められているのは、与えられた問いを前提とし、それに対して、出題者が求めている解答を書くことだ。このような状況で、AIは「先生」(あるいは、チューター、家庭教師)として機能する。
「与えられた問いに対して、出題者が要求している正しい解答を書く」という最終目的を達成するための、知識の整理、要点の抽出、解答例の提示などの点で、AIは極めて有能だ。


