日本では、将来、東京―大阪間を約1時間で結ぶリニア中央新幹線の建設が進んでいる。一方、一足先に開通した中国の高速リニアは、20年以上たっても営業区間が30kmのままだ。試験線では速度記録の更新が続くのに、なぜ路線は広がらないのか。海外メディアの報道から、「中国リニア」が直面する課題をたどる――。
龍陽路駅に停車する上海トランスラピッドの車両
上海トランスラピッドの車両(写真=Max Talbot-Minkin/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

上海市内から空港までの30kmを7〜8分で走る

時速431キロ。車内のディスプレイが最高速度への到達を告げるころには、窓の外の景色はびゅんびゅんと後ろに飛び去っていく。上海リニアは龍陽路駅と浦東国際空港を結ぶ30キロを、わずか7〜8分で駆け抜ける路線だ。

中国の国威を世界の要人に示す場としては申し分ない。アラブ首長国連邦(UAE)英字日刊紙のガルフ・ニュースは2025年11月、UAE大統領府のシェイク・テヤブ・ビン・モハメド・ビン・ザイド副長官がこの「世界最速の営業列車」に乗ったと伝えた。

ただし、上海リニアが常に時速431キロで走行しているわけではない。英鉄道業界専門誌のインターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルによると、この路線は開業時の最高速度が430キロに設定され、実測431キロでギネス記録にも認定された。だが現在、通常の運転では最高時速300キロに抑えられている。リニアながら、日本の新幹線と同じ水準だ。

中国はドイツ企業との提携で敷かれたこの路線を、世界で唯一営業運転している高速リニアとして誇ってきた。だが技術の壁は高く、採算も合わない。2002年の開通式典から23年がたつが、営業路線は今も30キロにとどまり、高速リニアの新設や延伸は1キロも実現していない。

車体を浮かせるための繊細な制御

上海リニアは2004年に定期運行に漕ぎつけたが、中国で営業運転する高速リニアは、今もこの1区間、1路線きりだ。

同路線は電磁吸引式(EMS)を採用している。この方式では、反発力を利用する日本式と異なり、鉄製の軌道の下に電磁石を回り込ませ、下から軌道に“吸い付かせる”ことで、車体をわずかに持ち上げる。

そのため、制御しなければ車体は軌道に吸着してしまう。1000分の1秒単位で隙間の広さを制御する繊細な技術が求められるが、そこまでしてなお、速さでは従来の車輪式の高速鉄道と大差ない。

米技術解説誌のインタレスティング・エンジニアリングによると、世界の高速鉄道網のおよそ3分の2を占める中国では、通常の列車でも時速300〜350キロで走る。