速く走るほど重くなる電気代の負担
速度面で利点が少ない割に、建設費はかさむ。
リニアは専用の軌道でしか走れず、在来線には乗り入れられない。1本引くとなれば全区間が新設になる。費用に見合う延伸の理由が示しにくい。
この技術を生んだドイツでも、リニアは同じ理由で普及しなかった。2008年にミュンヘン空港線の計画を中止し、国内には今も高速リニアの営業路線が1本もない。
建設費に加え、電力費用の問題もある。
米電気電子学会(IEEE)のシニア会員で、同学会のデジタル・リアリティ・イニシアチブ共同議長を務めたロベルト・サラッコ氏は2022年、IEEEのサイト「フューチャー・ダイレクションズ」への寄稿の中で、上海リニアに乗った経験に触れている。
全速で走るのはピーク時の列車だけで、それ以外の時間帯は電気代を抑えるために時速300キロに落とされていたという。こうした運用自体が、リニアの運行が安上がりではないことを示していると、サラッコ氏は指摘する。
磁力で浮かせて走らせれば抵抗が減り、理屈の上では必要な電力は少なくて済む――。だが実際には、磁石に電力を送り続けること自体が大量の電力を食うと、同氏は説明する。
上海から北京まで延ばす構想もあった
開通時の祝賀は、確かに盛大だった。
2002年12月31日、大晦日。ドイツのゲアハルト・シュレーダー首相が上海に駆けつけ、中国の朱鎔基(シュ・ヨウキ)首相とテープにハサミを入れた。リニアの試験運行は、こうして始まった。
乗客を乗せた列車が龍陽路駅を滑り出し、まもなく時速430キロに達する。朱氏はこの開通の瞬間を、「上海の都市発展史、中国の鉄道史における大きな出来事」と評した。CNNは、ドイツと中国の技術陣が2年半をかけて建設し、総工費は100億元(約2300億円)に上った路線だと伝えている。
ドイツ方式のリニア「トランスラピッド」は、シーメンスとティッセンクルップの合弁会社が手掛けた。そのティッセンクルップのエッケハルト・シュルツCEOは、さらに先を見据えていた。自国だけでなく、多くの国が中国の例に続くと確信していると語った。
政府の後押しも受けたドイツ陣営が次に狙ったのは、上海―杭州間の200キロ区間だ。その先には、上海―北京間の1250キロも視野に入れていた。
だが、上海―杭州も、上海―北京も、構想に終わった。

