中国は圧倒的な世界シェアを誇るレアアース(希土類)を外交カードとして使っている。評論家の白川司さんは「中国がレアアース規制を強化したことで、日米を中心に中国抜きの供給網を構築する動きが進んでいる」という――。
レアアース市場を独占する中国のイメージ
写真=iStock.com/wildpixel
※写真はイメージです

レアアース精錬でシェア85%を握る

IEA(国際エネルギー機関)によれば、2025年時点で中国はレアアースの精錬で世界の85%を占めた。

【図表】精製原料生産量の国別シェア
出典=IEA.「Global Critical Minerals Outlook 2026」 CC BY 4.0

レアアースの対米輸出額は年間10億ドルにも達しないものの、そこから作られる高性能永久磁石は、電気自動車、医療機器、産業用ロボット、ミサイル、F35戦闘機など多くの高性能製品に欠かせない。

レアアースは金額は小さくても、供給を止められれば巨大な産業が動かなくなる重要な「チョークポイント」である。日中対立のなかでレアアース供給網を再構築することは日本企業にとっても死活問題となりうるものだ。

2025年、トランプ政権が中国に高率関税をかけると、習近平指導部はレアアースの輸出規制で反撃した。中国はレアアースを利用して、アメリカに圧力をかけることに成功している。

だが、そこには陥穽かんせいもある。それは、中国が「チョークポイントは、実際に使う前が最も強い」という外交における大原則を軽んじすぎていることだ。

中国のレアアース規制で各国が動いた

レアアースにおける中国の本当の優位は、30年以上かけて築いてきた分離・精製・加工能力、低コストの生産設備、技術者の蓄積、政府支援、そして大きな環境負荷を受け入れながら形成してきた産業集積にある。

鉱山開発だけでも長期間を要し、鉱石を掘った後には、分離、精製、磁石製造という工程があり、長期購入契約、価格安定策、環境規制、資金調達まで考えなければならない。

ところが、中国がレアアース規制を強化したことで、各国の認識が大きく変わった。これまで採算が合わないとして放置されてきた鉱山や精製施設への投資が進み、政府備蓄が増え、リサイクル技術や代替材料の研究が加速した。中国以外の事業者に対して、政府や大企業が長期購入を保証する動きも広がっている。

実際、IEAによれば、磁石用レアアースの精錬における最大供給国、つまり中国のシェアは、2023年の91%から2025年には85%程度まで低下した。現在計画されているプロジェクトが実現すれば、2035年には70%程度まで低下する可能性がある。