2010年から「脱中国」を進めてきた

日本はアメリカとの同盟を堅持する一方、他国に政治体制や政策を強制する性格は比較的弱い。さらに、世界有数の素材・部品産業、政府系金融機関、総合商社、資源備蓄制度を持ち、ASEANとは数十年にわたり経済協力を積み重ねてきた。

2010年の日中関係悪化を契機に、日本は中国への過度な依存を問題視し、豪州などでの資源開発、省レアアース技術、リサイクル、代替材料の開発を進めてきた経験がある。

日本の強みは、覇権国ではない一方で、制度と産業の双方を動かせるところにある。現在の国際情勢では、この立場がハブとして有利に働く可能性がある。

その役割分担を具体化する一つの仕組みが、アメリカが主導する「パックス・シリカ」だ。2025年12月、日本とアメリカはパックス・シリカ・サミットを前に共同声明を発表し、経済安全保障を含む日米間の経済協力を、インド太平洋を超えるパートナーとの連携へ広げる方針を確認した。

日章旗の隣に、星条旗をたてようとしている手元
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35の国・地域が参加する世界秩序

パックス・シリカ宣言の特徴は、AIのサプライチェーンを半導体だけで捉えていないことだ。ソフトウエア、基盤モデル、情報通信ネットワーク、コンピューティング、半導体、先端製造、物流、鉱物の精製・加工、エネルギーまでを一体的な「戦略的スタック」と位置付けている。

また、中国への過度な依存を低減し、過剰生産や不公正なダンピングなどの非市場的慣行から民間投資を守り、機微技術や重要インフラを不当なアクセスや支配から保護する方針も盛り込まれている。

2026年6月の第2回パックス・シリカ・サミットでは、民間企業も参加し、日本を含む35の国・地域の政府がAI分野の技術革新と協力を進める共同声明に加わった。

パックス・シリカは、少数の先進国による輸出規制だけではなく、信頼できる国々の間で投資、市場、技術、インフラを一体化する方向へ進み始めている。

アメリカが提供できるのは、先端半導体、ソフトウエア、ドル金融、巨大な政府調達市場、投資審査、輸出管理、制裁能力である。いわば先端産業圏の「頭脳」と「強制力」だ。しかし、AIも半導体も電力、燃料、鉱物、物流なしには動かない。そこを補うのが、日本が主導しようとしているもう一つの構想である。