どれだけ稼いでいても、その収入が生涯続くとは限らない。会社の倒産やリストラなど、思いもよらない出来事が起こることもある。ルポライターの増田明利さんによる『限界労働者』(彩図社)より、赤字で倒産し借金を抱えた元社長の現在の暮らしを紹介する――。(第1回)
お金のトラブルについて考える人
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50代で社長から月22万円の倉庫作業員へ

仮名…佐野晴彦(59歳)
最終学歴…89年大学卒
出身地…東京都文京区
現住所…神奈川県大和市
居住形態…賃貸アパート、家賃6万8000円
職業…業務請負会社契約社員
収入…月収22万円前後
家庭状況…妻、子ども2人は独立
最近の大きな出費…炊飯器買い替え 1万3800円

JR川崎駅から30分近く歩いたところにある、大手家電量販店の物流センター。だだっ広い倉庫内で商品の仕分けや梱包をしている佐野さん。ここが2年前からの佐野さんの職場だ。

「自分の身分というか本当の雇用主は業務請負会社で、わたしはそこの契約社員ということになります。請負会社からこの配送センターに派遣されているというわけです」

佐野さんがこの仕事に就いたのは23年6月、それ以前は都内で工務店を経営していた元社長だった。創業したのは01年、翌02年に法人に改組し、中堅工事会社の下請けとしてマンション建設の一部に参加していた。

「主に内装工事を請負っており、クロス張り工事や備え付け家具の組み立てなどを担当していたんです」

赤字2000万円、負債3000万円

請け負う作業の範囲は徐々に拡大し、既存マンションの大規模修繕工事では建物外壁の塗装、排水管の交換、空調機器のメンテナンスも任されるようになる。佐野さんと奥さんだけで始めた個人商店だったが、社員や職人を12人抱える会社に成長。

下請けの下請けだが、自治体が発注する小中学校や図書館の改修工事などの公共事業にも参加できるようになった。

「最盛期は17年3月の決算でしたね。売上高は2億9000万円を計上していた。もう昔の話だけど、個人的な年収は1200万円ぐらいありましたよ」

ところが19年に入った頃から下り坂に。まず仕事を分けてもらっていた建設会社が贈賄容疑で摘発され事実上の倒産。これで仕事の3分の1が吹っ飛んだ。

「コロナ禍で多くの工事が延期になりましたね。中止になったのも10件以上あった。当然、うちに下りてくる仕事はない。たまに入ってくるテナントビルの原状回復工事では、工事代の一部が未払いにされたこともありました」

22年3月期の決算は約2000万円の赤字を計上。過去の設備投資に伴う借入金返済も重荷になり、資金繰りができずに事業継続を断念、自己破産を申請したという顛末だ。

「負債は3000万円近い金額でした。どうすることもできませんよ」