鉄道大国・ドイツの巨大ターミナル駅を地下に移す建設工事は、当初計画と比べて開業が23年遅れ、総事業費は約6倍に膨らむ見通しだ。「重大な欠陥」と指摘された巨大事業の迷走を、海外メディアが報じている――。
新駅舎の建設現場(2023年6月15日)
新駅舎の建設現場(2023年6月15日)(写真=Jeff Merku/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

守られなかった「2026年末開業」

「駅はいつ完成するんですか?」

2026年4月のイースターの週末、シュトゥットガルト中央駅の工事現場で、見学者の一人がそう尋ねた。3日間で8万2000人が訪れた、ドイツ鉄道(DB)などが年に一度開く現場公開での一幕だ。

しかし、ドイツ地方紙のシュトゥットガルター・ツァイトゥングによれば、案内係は誰一人答えられなかったという。

素人目には、立派な駅舎の工事はほぼ終わっているように見える。地下ホームには巨大な柱が立ち並ぶ。だが、やるべきことはまだ多く残る。

シュトゥットガルト地方紙のシュトゥットガルター・ナハリヒテンによると、DBはつい昨年の時点で、2026年12月の開業目標を維持するとしていた。その言葉は、守られていない。

行き止まり式の中央駅を地下の通過駅に造り替える「シュトゥットガルト21」プロジェクトは2010年の着工時点では、2019年の完成を掲げていた。だがDBは2026年6月、新中央駅の開業を2031年12月に改めた。着工時の目標から実に12年の遅れとなる。

線路の勾配、収容可能な容量など、数々の課題を抱えるこの駅の設計は、果たして成立するのか。技術者らが計画の初期から繰り返してきた問いに、DBは向き合わざるを得なくなりつつある。

成功している駅を地下へ移す

シュトゥットガルトは人口60万人あまりのバーデン・ビュルテンベルク州の州都で、西にフランス、南にスイスを控えるドイツ南西部の都市だ。

AFP通信が取り上げるように、シュトゥットガルト中央駅の地下化計画は、ボッシュやメルセデス・ベンツが本社を置く産業地域の玄関口にふさわしいものとして構想された。

1922年から順次供用開始となった中央駅は、フランクフルトからシュトゥットガルトを経てミュンヘンを結ぶ幹線上にある主要駅だ。国際路線客でも賑わうと、レイルウェイ・ガゼットはいう。パリからストラスブール、ミュンヘン、ウィーンを経てブラチスラバへ延びる欧州横断輸送網の一部を成す。

こうした長距離列車の乗客に加え、1970年代に整備された市内横断線を走るSバーンの通勤客が日々行き交い、地元交通の拠点としても親しまれている。

では、すでに成功を収めていたこの駅で、なぜホームと線路を地下に移す必要があったのか。