工期は遅れ、事業費は膨れ上がる

シュトゥットガルト中央駅は行き止まりの構造で、Sバーンを除く大半の列車は引き返すしかない。これが南ドイツの鉄道輸送のボトルネックだった。

シュトゥットガルト21は、この駅を地下の通過駅に造り替える計画だ。計画は壮大で、工事は中央駅の構内にとどまらない。シュトゥットガルター・ナハリヒテンによると、長さ50キロ超の新トンネルを建設するほか、車両留置場、市郊外のシュトゥットガルト空港に設ける長距離列車用の駅、そしてシュトゥットガルトから空港を経てヴェンドリンゲンに至る新線を新たに設ける。その先のウルムまでの高速新線は、2022年12月に開業済みだ。

英鉄道業界専門誌のレイルウェイ・ガゼットによれば、空港の新駅は新設のフィルダートンネルで中央駅と結ばれ、中央駅から空港までの所要時間は27分から6分へ、ウルムまでは64分から41分へ短縮される計画だ。

1994年に構想が発表され、95年に枠組み協定が結ばれた当初計画での総事業費は25億ユーロ(約4460億円)、完成予定は2008年とされた。ところが2026年初めの時点では、総事業費は当初計画の4倍超に当たる110億ユーロ超(約1兆9600億円)に膨らんでいた。

着工から15年後の2025年初めになっても、市の中心部の一部は依然として巨大な工事現場の様相だった。反対団体で元裁判官のディーター・ライヒェルター氏はAFPに、「金が窓から投げ捨てられているようなものだ」と語る。

建設中のシュトゥットガルト中央駅コンコースの様子=2026年4月4日
写真=DPA/共同通信イメージズ
建設中のシュトゥットガルト中央駅コンコースの様子=2026年4月4日

「完全デジタル」なのに信号機450基を設置

無駄の象徴となったのが、ケーブル敷設のやり直しだ。

公共放送SWRが2026年6月に関係者の話として報じたところでは、敷設済みの信号ケーブルとケーブルダクトは総延長1000キロを超えていたが、その大半をやり直さなければならないという。

SWRの取材に応じた関係者によれば、厳しい工期に追われたDBは、デジタル信号システムの設計が固まる前に、通常の計画手続きを省いて施工業者に工事を前倒しで発注したという。これが完全にアダとなった。

計画ではドイツの鉄道拠点として、初の完全デジタル化を果たすはずだった。しかし、ETCS(欧州列車制御システム)の車上装置を積まない貨物列車が、拠点の外縁区間を今後何年も走り続ける。そうした列車は、地上に信号機がなければ走れない。

デジタルへの一本化を前提に工事の大部分を終えた後、従来型の信号機450基も設置することになり、敷いたばかりのケーブルを更新する運びとなった。SWRの取材に応じた専門家は、信号機450基の設置だけで約4500万ユーロ(約80億4000万円)かかると見積もる。