一流のビジネスパーソンはどこが違うのか。そのひとつは「数字を扱う力」だろう。なぜ数多のデータを瞬時に分析できるのか。プロに、そのテクニックを聞いた――。

「コストが大幅に削減できます」と「コストが100万円削減できます」。

どちらも言っていることは変わりません。しかし、説得力を感じるのは後者ではないでしょうか。ビジネスシーンで数字を使って語れる人は、勝てる人です。数字には具体性と客観性があり、万国共通で、どんな相手も動かす強い力をもっているからです。

数字を習慣として使いこなすには、物事を数字に置き換える計算力が求められます。ただし、「計算力が高い人=仕事ができる人」ではありません。計算力には数字に限らず、仮説を立てたりシナリオを考えたりする力も含まれるからです。

私は、事業再生のコンサルに長らく携わってきました。その経験から学んだのは、再生の可能性が低い破綻企業ほど、計算力の欠如が顕著なことです。計算力を使って現実や将来を直視できないと、個人にとっても企業にとっても命取りになります。

一方、かつてAWS(Amazon WebServices)で働いたとき、急成長を遂げたテック企業の数字を読む力と扱う力を痛感しました。アマゾンには企業文化として、仕事に欠かせないプロセスの頭文字をとった「STARフォーマット」があります。まず、現状を理解する「シチュエーション」。次は課題を整理する「タスク」。そして、行動する「アクション」。最後が具体的な手段を示す「リザルト」です。

採用面接を受ける際、情報を整理して伝える手法として知られますが、数字に落とし込むためのフレームワークとしても非常に優秀です。数字で目標を設定し、説明することは、事業計画でもプレゼンでも日々の行動管理においても威力を発揮します。商品の評価について「すごく好評でした」ではなく、「1万人のユーザーに1日3回の頻度で使ってもらった」と数字で語るほうが、効果的に伝わるのは当然です。

営業や婚活の全体像は「ファネル」で理解が進む

実際に数字を使う際には、統計学のエッセンスを応用すると、物事の理解度が上がります。

曖昧さをなくして、数字への落とし込みに有効なのが「ファネル分析」という考え方です。ファネルとは漏斗のこと。ビジネスのプロセスをいくつかのステップに分解し、それぞれの確率を計算することをいいます。

営業活動を例にとると、訪問、提案、購入・契約のコンバージョン・レート(壁を突破する確率)がそれぞれ50%なら、訪問成功率50%×提案成功率50%×クロージング成功率50%=商談成功率は12.5%となります。「8回挑戦して成功する確率は約1回」であり、「もうひとつ契約を取るためには、あと8件の訪問が必要」と考えることもできます。ファネル分析で逆算すれば目標が設定しやすくなり、必要なアクションが鮮明になります。

【図表1】「成功率」の解像度を高める方法
行動を段階に分解して、それぞれのコンバージョン・レートをかけていくと最終的な確率が把握できる。

ファネル分析は特にネットビジネスで有効活用されています。サイト訪問者の購買プロセスを段階的に可視化し、どこで離脱が発生しているかを分析。問題点を改善して成果を最大化させていくのです。ビジネス以外にも応用できます。たとえば婚活アプリを利用する場合、メッセージを送って返信が届く確率は30%→そのうち相手に会える確率は20%→交際に至る確率は5%……と全体像を理解できます。

(構成=石井謙一郎 図版作成=大橋昭一)