リサーチを依頼されたとき、いかに難易度が高いかを相手に伝えるにはどうすればいいか。経営コンサルタントの斎藤広達さんは「統計学の基本的な概念のひとつである『正規分布』の考え方として、身長や体重、株価の上下、自然現象の発生度といった世の中の多くの事象が、同じような曲線パターンを描くと分析されている。例えば身長190cm以上の成人男性を探して欲しいといわれたら、相手に対してそれがいかに少ないかを視覚的に示すことができる。さらに納期などを強気に交渉するためには、『標準偏差』を組み合わせるといい」という――。
※本稿は、斎藤広達『頭のいい人が使っているずるい計算力』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
「みんな」の正体を掴む「正規分布」の考え方
仕事の場では、最初のヒアリングで散々「みんなが」と言っているけれど、詳しく聞いてみると、数百ある取引先のうちの2~3社から言われただけ、ということがよくあります。
正しく表現するなら「一部の顧客から、ダメだと言われている」のはずですが、つい「みんなの意見」とまとめて、結果的に歪んだ情報をアウトプットする人は、少なくありません。
もちろん、たまたま聞いた2~3件の意見が全体を表していた、という考え方もできます。しかし、「平均値の歪み」を知った今なら(連載第4回)、少ないサンプルを平均化して考えると偏りが出る可能性がある、ということはもうおわかりでしょう。人の意見ですから、良いほうにも悪いほうにも極端な声が数%は出てくるはずなのです。
では、意見の正しさは、何を基準に考えればいいのでしょう。「みんな」とは、一体誰のことを指しているのでしょうか?
この答えを計算で導くのは、案外、難しい問題です。
しかし、「正規分布」の考え方を用いれば、感覚として「みんな」の正体を掴むことができます。
正規分布とは、統計学の基本的な概念のひとつです。
数学的に説明すると、平均値と最頻値、中央値が一致し、それを軸として左右対称となっている確率分布のこと。これは、ドイツの数学者カール・フリードリヒ・ガウスの名前を取って、「ガウス分布」とも呼ばれています。
正規分布は高校数学で習う分野ですが、文系専攻などで教科選択があった場合、そもそも授業で取り扱っていないケースがあるようです。