50代からは睡眠時間にこだわりすぎなくていい

睡眠不足は社会生活上のさまざまなトラブルのもとになります。たとえば日中の作業効率の低下、さらに事故のリスク。昼間に眠気が起こり、交通事故を起こす人もいます。睡眠の問題による経済的損失が莫大な額に上ることは間違いありません。

私は精神科医としての経験を生かして睡眠専門のクリニックを開業し、20年以上にわたって睡眠に問題を抱える人たちを診療してきました。この20年間で患者さんの数は増加し続け、現在では毎日150人以上が来院するようになりました。

睡眠の悩みを抱える人たち全員に治療が必要かというと、そうではありません。たとえば、夜、なかなか眠れずに途中で何度も起きてしまう、毎日決まった時間に寝ているのに早朝に目が覚めてスッキリしない……。こうした悩みを抱えている中高年の人は少なくありませんが、若いころと比べて睡眠時間が短くなるのも、途中で目が覚めるのも、加齢による自然な変化です。睡眠時間は、成人以降は少しずつ短くなり、50代からその傾向は顕著になります。

「最低限、何時間眠ればいいのか」とよく聞かれますが、必要な睡眠時間は年齢によって違います。多くの疫学調査によると、7時間の睡眠が健康でいられるかどうかの基準とされています。しかし、60代以降はどうしてもそれより短くなっていき、6時間程度になります。さらに、睡眠が分断されやすくなり、途中で目が覚めやすくなってしまいます。

年齢を重ねるにつれて人は長い時間眠れなくなっていきますが、なぜそのような変化が起こるのかはまだ明らかになっていません。私自身もいい年ですから、朝までぐっすりとはいかないのが現実です。

睡眠時間を確保することはとても重要ですが、50代以降の人は、あまり時間にこだわりすぎないことが大事です。「7時間は寝なければ」と思うと、眠くないのに無理して布団に入り、長い時間を過ごすことになるので、余計に眠りが浅くなってしまうのです。