松江の人たちは“笑顔で送り出した”
NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」。ついにヘブン(トミー・バストウ)は、トキ(髙石あかり)の家族と共に、離れがたい松江を去ることに。
熊本へ行くことを決めたトキ。
— 朝ドラ「ばけばけ」公式 放送中 (@asadora_bk_nhk) February 11, 2026
そして、ヘブンさんが松江を離れようとしている本当の理由を知った錦織さんは…。#髙石あかり #吉沢亮#ばけばけ pic.twitter.com/93tWAmph5J
さて、八雲が松江を去って熊本に行くといった時、松江の人は特に慰留はしていない。それ以前から話はあったかもしれないが、熊本に移る話が決まったのは10月上旬。そして、出発は11月15日。わずか1カ月あまりの慌ただしさだ。当然、中学校は学期中。当時は新学期が9月からなので、新学期が始まって間もなく「やめます」と言い出したわけだ。
まだ契約期間が5カ月余り残っていた。まったく迷惑千万である。
でも、松江の人が急な退職に怒っていたという記録はない。それはなぜか。移る先は熊本の第五高等中学校、後の第五高等学校——当時は、卒業すれば無試験で帝国大学に入学できる超エリート校だ。県内のエリート校に過ぎない松江中学校とは格が違う。おまけに給料は松江中学校ではとても払えない月俸200円。これでは邪魔するわけにもいかない。笑顔で見送るのが一番角の立たないやり方だ。
こうして八雲は、セツの家族と共に熊本へと去った。八雲がなぜ松江を離れたのか。その動機は、冬の寒さに耐えられなかったこと、そしてセツをはじめ面倒を見なければならない家族が増えたからだとみられている。
金の使い方が“出鱈目”だった八雲
さて、月に100円というのは、当時の島根県ではかなりの高給であることは、これまでも語られている通りだ。当時、家族もいる西田千太郎(英語教師・錦織のモデル)の月俸が45円程度。それで十分にやっていけている。いくら面倒をみなければならない家族ができたとしても、100円あれば十分に回るはずだ。まして200円ともなれば、家族に何不自由なく贅沢な暮らしをさせてやれる。
……と、普通は考える。
ところが、松江の人なら誰でも羨む月100円の収入は、八雲にとって決して十分ではなかった。八雲はとにかく金の使い方が出鱈目な人だったのだ。
金銭には度を越して無頓着だったことを、セツはよく記憶している。たとえば、結婚して間もなく、八雲が西田千太郎と泊まりがけで海水浴に出かけた時のことだ。後から宿にやってきたセツは驚いた。

