アマゾン本社を見て「ここには勝てん」と確信
「『打倒アマゾンや!』って意気込んでアマゾン本社へ行ったんですよ」
京都を拠点に全国50店舗を展開する大垣書店。会長の大垣守弘さんは、2018年、米シアトルのアマゾン本社を視察のため訪れた。
国内では、書店の減少が深刻化の一途をたどるなか、大垣さんはある思いを抱いた。
「書店離れを加速させた張本人とも言われるアマゾンが、一体どんな会社なのか、どんな仕組みで本を売っているのか、自分の目で確かめてやろう」
そう意気込み半分、闘志半分でアメリカへ乗り込んだのだ。
「実際に本社を案内されると、40階建てのガラス張りビルが5棟。『これ全部ウチのビルです』って言われてね。すぐに、あぁ、ここには勝てん、無理やなと感じました(笑)」
予想を超えた圧倒的なスケールに衝撃を受け、日本から同行した出版関係者たちも、しばらく言葉を失っていたという。
しかし翌日、シアトル郊外の独立系書店の視察が、大垣さんの長年抱いてきた思いを一気に後押しした。
書店でくつろぐ社員の姿
一行は、書店の開店と同時に店員から説明を受けた。アマゾン本社の進出によって周辺の家賃が高騰し、やむなく郊外へ移転したこと。現在は、近隣にアマゾンの社員が多く暮らしていることなど、これまでの歩みを教えてもらった。
大垣さんが驚いたのは、店員の説明どおりの光景が、すでに店内に広がっていたことだった。気がつけば店内は人で埋まり、その大半がアマゾンの社員だという。レジでは社員証を決済用のカードとして使い、コーヒーを片手に思い思いの時間を過ごしていた。
「アマゾンの社員さんが本屋でくつろぐ姿を見て、はっとしたんです。彼らだって、デジタルの世界から離れて“本屋で過ごす時間”を求めている。人はやっぱり、本と出会う場所が必要なんだって」
巨大な流通のプラットフォームには敵わない。それでも、人が書店に足を運ぶ理由は確かに残っている。シアトル視察は、その手応えを得た旅でもあった。


