全国の書店はこの25年でほぼ半減した。「本が売れない時代」と言われるなか、京都発の大垣書店は30年で売上は右肩上がり、店舗数も増やし続けている。転機は2018年の米アマゾン本社視察。「ここには勝てん」と悟った大垣守弘さん(現会長)は、真逆の戦略に舵を切る。書店が生き残るための“答え”とは何か。フリーライターのマエノメリ史織さんが、大垣会長に聞いた――。

アマゾン本社を見て「ここには勝てん」と確信

「『打倒アマゾンや!』って意気込んでアマゾン本社へ行ったんですよ」

京都を拠点に全国50店舗を展開する大垣書店。会長の大垣守弘さんは、2018年、米シアトルのアマゾン本社を視察のため訪れた。

国内では、書店の減少が深刻化の一途をたどるなか、大垣さんはある思いを抱いた。

「書店離れを加速させた張本人とも言われるアマゾンが、一体どんな会社なのか、どんな仕組みで本を売っているのか、自分の目で確かめてやろう」

そう意気込み半分、闘志半分でアメリカへ乗り込んだのだ。

「実際に本社を案内されると、40階建てのガラス張りビルが5棟。『これ全部ウチのビルです』って言われてね。すぐに、あぁ、ここには勝てん、無理やなと感じました(笑)」

予想を超えた圧倒的なスケールに衝撃を受け、日本から同行した出版関係者たちも、しばらく言葉を失っていたという。

しかし翌日、シアトル郊外の独立系書店の視察が、大垣さんの長年抱いてきた思いを一気に後押しした。

Amazon視察
提供=大垣守弘さん
米シアトルのアマゾン本社。ガラス張りの巨大ビルに圧倒されたという

書店でくつろぐ社員の姿

一行は、書店の開店と同時に店員から説明を受けた。アマゾン本社の進出によって周辺の家賃が高騰し、やむなく郊外へ移転したこと。現在は、近隣にアマゾンの社員が多く暮らしていることなど、これまでの歩みを教えてもらった。

大垣さんが驚いたのは、店員の説明どおりの光景が、すでに店内に広がっていたことだった。気がつけば店内は人で埋まり、その大半がアマゾンの社員だという。レジでは社員証を決済用のカードとして使い、コーヒーを片手に思い思いの時間を過ごしていた。

「アマゾンの社員さんが本屋でくつろぐ姿を見て、はっとしたんです。彼らだって、デジタルの世界から離れて“本屋で過ごす時間”を求めている。人はやっぱり、本と出会う場所が必要なんだって」

巨大な流通のプラットフォームには敵わない。それでも、人が書店に足を運ぶ理由は確かに残っている。シアトル視察は、その手応えを得た旅でもあった。

Amazon視察
提供=大垣守弘さん
近くの書店では多くのアマゾン社員がくつろいでいた