ロイヤリティは1%以下
こうしたやり取りを重ねるなかで、2017年2月、両社は業務提携に踏み切った。
狙いはただ一つ、書店を残すことだった。本の仕入れを大垣書店に一本化し、運営ノウハウや情報を共有する体制を整えた。
この判断の背景には、大垣さん自身が体験した個人書店時代の影響がある。売りたい本があっても、小さな書店は仕入れ量が少なく、利益が上がらない。そのもどかしさを、誰よりも知っていた。
提携条件にも、その思いは色濃く表れていた。ロイヤリティは1%以下。売り上げが1000万円あっても、大垣書店に入るのは10万円に満たない。一般的な書店フランチャイズ契約が3〜5%と言われるなかでは、異例の低さだ。利益よりも、書店を続けられる仕組みを優先した結果だった。
だが、そのわずか数カ月後、なにわ書房は自己破産する。それでも大垣書店は手を引かなかった。同年6月に2店舗を直営として引き継ぎ、翌月にはさらに2店舗を受け入れた。
低いロイヤリティの業務提携も、直営として引き受ける決断も、大垣さんの発想の起点は同じだ。「一軒でも多く、書店を残したい」。効率や収益性よりも、まず店が続くこと。その現実を支えるために、大垣書店は“応援する側”に回る道を選んできた。
継続できる環境をつくる
この考え方は、業務提携や直営店への拡大にとどまらない。2011年、大垣さんは鳥取県の今井書店、広島県の廣文館とともに、共同仕入れ会社「大田丸」を立ち上げた。
狙いは、出版社とあらかじめ販売目標を共有し、全国の書店へ安定的に配本・販売できる仕組みをつくることだ。加盟は11書店、店舗数は124店舗(2025年9月)にまで広がり、地方書店の動きやニーズを把握できる点も大きな強みになっている。
この取り組みも、派手な利益を生むものではない。しかし、書店が無理なく続いていくための土台を、確実に支えてきた。
ただし、大垣さんはこうした仕組みだけで書店が成り立つとは考えていない。どれだけ仕入れや制度を整えても、棚をつくり、店の空気を決めるのは、現場に立つ「人」だと考える。
では、その力をどう育て、どう書店の価値につなげてきたのか。大垣書店が次に向き合ってきたテーマは、まさにそこにある。
「書店員の目利き」に投資する
店の価値を最終的にかたちにするのは、現場に立つ書店員たちだ。一人ひとりが「何を選び、どう並べ、どう薦めるか」で、店の空気も、お客さんの入りも大きく変わる。だからこそ大垣さんは、書店の価値を支える「人の力」に、真正面から向き合ってきた。
書店員に求められるのは、ただ本を売る力だけではない。作家どうしのつながりや出版社の色、あるいはジャンルの背景までふまえて、細やかな判断ができる目が必要だという。

