米半導体大手エヌビディアはAIチップ市場の約90%を占め、製造を台湾のTSMCが主に担っている。この製造ラインで、不可欠な素材・装置の要所を握っている日本企業に海外メディアが注目している。中国が必死に追いかけても追い付けない「日本の半導体」の底力とは――。
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世界一「エヌビディア」が頼る日本企業

世界的AIチップ製造のエヌビディア(NVIDIA)の最新の四半期利益が、前年比ほぼ倍増の430億ドル[約6兆8300億円(16日現在のレート、1ドル158.9円で換算、以下同)]に達した。同社として初めて、アップル、マイクロソフト、グーグル親会社のアルファベットのいずれをも上回った。

2025年10月31日、韓国南東部の慶州市で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)CEOサミットの合間に開かれた記者会見で、NVIDIA社のジェンセン・フアン最高経営責任者(CEO)が発言している
写真提供=Yonhap News Agency/共同通信イメージズ
2025年10月31日、韓国南東部の慶州市で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)CEOサミットの合間に開かれた記者会見で、NVIDIA社のジェンセン・フアン最高経営責任者(CEO)が発言している

米全国紙のニューヨーク・タイムズによると、2月発表の決算でエヌビディアの過去12カ月の純利益は1200億ドル(約19兆1000億円)だった。

年間利益が1000億ドル(約15兆9000億円)を超えた企業は歴史上ごく一握りだが、その中でも3年前の利益がわずか44億ドル(約7000億円)に過ぎないエヌビディアの伸び方は尋常ではない。

グーグル、アマゾン、マイクロソフト、メタなど大手テック各社が、データセンター建設に今年だけで5000億ドル(約79兆5000億円)超を投じ、半導体の需要を爆発的に伸ばしている。これを受け、サーバーに欠かせないエヌビディアの収益は大きく押し上げられた形だ。同社は今、AIチップ市場の約90%を握る半導体の巨大企業だ。

日本経済新聞による米国時価総額上位ランキングでも、約4兆7500億ドル(約754兆円)でアップルを上回り、世界1位に君臨する。

さて、そのチップを物理的に作る装置を製造し、事業展開に不可欠な素材を供給しているのは誰か。答えのひとつは、意外にも日本の食品メーカーにある。

食品メーカーの異例人事の背景

食品大手の味の素が開発した「ABF(味の素ビルドアップフィルム®)」は、高性能半導体のパッケージ基板に使われる絶縁材で、ほぼすべての先端チップ(演算の中核を担うCPUおよび並列処理に秀でるGPU)に採用されている。うま味調味料で知られる企業が、見えないところでAIインフラの屋台骨を支えているのだ。

このフィルムを世に送り出したのが、味の素の研究者で現社長の中村茂雄氏だ。同社によると、中村氏は1996年、半導体パッケージ基板向けの絶縁材の研究に着手した。その成果がABFとして結実し、やがて世界の先端チップ製造に欠かせない素材へと育った。2011年には日本化学会の化学技術賞を、翌年にはビジネス戦略面の革新性を評価するポーター賞を受賞している。

昨年、中村氏はCEOに抜擢された。元々は技術畑出身でありながらCEOに登用されたのは、味の素グループとして異例の人事だった。研究開発からグローバル事業まで、30年超にわたるキャリアで培った知見が買われた形だ。

就任後には早くも250億円を投じてABFの生産能力を2030年までに50%増強する計画を打ち出しており、半導体素材メーカーとしての味の素の存在感はさらに高まる見通しだ。