サッカーW杯も、大谷翔平が出場するWBCも、「テレビをつければ見られる」のが当たり前だった。だが、その常識はいま崩れ始めている。なぜ人気スポーツほど有料配信に移行するのか。ノンフィクションライターで日本大学客員教授の松瀬学さんは「WBCで起きた視聴スタイルの変化は、いずれワールドカップにも及ぶだろう」という――。
ワールドカップ(W杯)出発セレモニーで記念撮影する日本代表の選手ら。前列左端は日の丸鉢巻きを巻いた長友佑都。同左から2人目は森保一監督=2026年6月2日、千葉・成田空港
写真=時事通信フォト
ワールドカップ(W杯)出発セレモニーで記念撮影する日本代表の選手ら。前列左端は日の丸鉢巻きを巻いた長友佑都。同左から2人目は森保一監督=2026年6月2日、千葉・成田空港

「なぜ全部タダで見られないの?」

人気スポーツイベントの視聴スタイルが、大きく変わっている。6月11日に開幕するサッカーワールドカップ(W杯)北中米大会の全104試合の日本国内独占配信権を、動画配信サービスの「DAZN」(ダゾーン)が獲得している。ある大学の授業の後、サッカーファンの学生から素朴な疑問を投げかけられた。「なぜ、タダでぜんぶ、ワールドカップの試合を見られないのですか?」と。

一言でいえば、そういうメディア環境の時代なのだ。「市場原理です」と、スポーツビジネスに詳しい半田裕さん(大阪経済大学客員教授)は説明する。

「放送権、配信権を持っている大元は、FIFA(国際サッカー連盟)です。できるだけFIFAはカネが欲しい。だから、ワールドカップの放送権料は高騰の一途をたどりました。で、テレビ局はもう、高額な放映権料を自分たちだけで払えなくなった。ならば、資金力が豊富な動画配信サービスにその権利の座を譲ったわけです。ビジネスですよ、ビジネス。また、情報通信技術の進歩もあって、視聴する側の利便性が上がり、個人がお金を払って見る時代に変わったんです。いつでも、どこでも試合を見られます。当たり前の話ですよ」

いわば、映画と似ている。どうしても見たければ、レンタルビデオを借りる、いや定額制動画配信サービス(動画サブスク)の「ネットフリックス(ネトフリ)」などと契約する。音楽を聴きたければ、「Apple Music」などの定額制音楽配信サービス(音楽サブスク)と契約するだろう。スポーツイベントもしかり、なのだ。

そういえば、1997年に創業したネトフリは当初、レンタルビデオ(DVDやBlu-ray)の郵送レンタル事業を行っていた。1999年に月額料金で好きなだけ映画が借りられる定額制(サブスクリプション)を導入し、2007年、インターネットを通じた動画ストリーミング配信を開始したのだった。