配信権・放送権料は300~350億円規模に

前回の2022年のW杯カタール大会では、インターネットテレビの「ABEMA」が全64試合を無料で生中継し、日本戦など41試合をNHKなど地上波3局が中継した。金額は公表されていないが、推定で200億円程度(3)といわれた。

そして、今大会は、参加チーム数が「32」から「48」に拡大したことで、試合数が「64」から「104」に大幅に増えた。DAZNがネット配信では全試合をライブ配信し、地上波ではNHKが34試合、日本テレビが15試合、フジテレビが10試合を生中継する。このため、地上波で放送されない45試合はDAZNのみで視聴できる。日本戦については、地上波はもちろん、DAZNでも無料で視聴できる。

配信権・放送権料は、公表されていないが、複数のメディアによると、DAZNと地上波テレビ局で合わせて、300億~350億円規模とみられている(4)

半田さんは、ネット配信で「視聴する側の利便性は間違いなく上がった」と言う。

「視聴スタイルは多様化しました。テレビ一辺倒から個別視聴へと変化しています。テレビでなくても、スマホで見ることができます。自分の部屋でも、電車でも、好きな場所で、日本の試合を見ることができる。見逃しても、後から見てもいい。これは視聴者にとってはラクでしょ」

ちなみに、筆者は、迷った挙げ句、ネトフリに続き、今回、DAZNとも契約した。

フィールドでボールを踏むフットボール選手のクローズアップ
写真=iStock.com/andresr
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大谷翔平のWBCもW杯も「課金」の時代へ

そうはいっても、スポーツファンにとっては、地上波テレビで試合をライブで見られないのはつらいだろう。ことし3月の野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、ネトフリが約150億円(推定)(5)もの大金を出して、前回大会(2023年)で視聴率40%超えを記録した大会の全47試合を日本で独占ライブ配信した。

日本の国際スポーツイベントとしては異例の「テレビ中継ゼロ」大会となった。日本代表(侍ジャパン)の大谷翔平や山本由伸のプレーをみたければ、“お金を払ってください”というわけだ。

繰り返すけれど、「スポーツ中継は新しいフェーズに入った」のだ。もはやインターネット全盛の時代。ネトフリなどのネット動画配信サービス会社は、地上波テレビ会社とは桁違いの規模のビジネスを展開している。収益構造が違う。ネトフリの場合、収益源はサブスクで会員契約料を直接支払うすべての視聴者であるのに対し、テレビ会社は視聴率目的のCMスポンサー企業(NHKは受信料)となる。

コアファンは増えるが、新規ファンは減る

前回2023年WBCにおける日本の放送権料は30億円程度といわれていたから、今年のWBCで、テレビ会社がその5倍もの放送権料をねん出するのは無理だったに違いない。

ネトフリの投資対効果はどうだったのか。侍ジャパンは準々決勝敗退で期待外れに終わったが、新規契約者による収益に加え、知名度、普及度アップで、「成功」といえるだろう。

ただ、スポーツの普及、発展という視点でみた場合、この傾向はネガティブである。有料のネット配信会社の独占だと、熱狂的な野球ファンだけが囲い込まれることになる。スポーツの広がりでいえば、たまたまスポーツ中継を見るとか、ダイジェストではなく、大谷翔平の前後の選手のプレーも見るとか、そういうことが野球の発展につながっていくのだろう。テレビ中継で大リーガーに憧れて、野球をやりたくなるような子どもたちが少なくなるんじゃないかと危機感を抱く。