光秀が頼った娘婿の父・細川藤孝
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。第29回「天下への道」(7月26日放送)では、ついに秀吉(池松壮亮)と光秀(要潤)の決戦である山崎の戦いが描かれることになる。ここで光秀が敗北することは誰もが知っている。その敗北の理由は、畿内にいた諸大名がまったく光秀に呼応しなかったことだ。
中でも、光秀の要請を拒んだ代表格が、細川藤孝(亀田佳明)だ。この藤孝、今回のドラマでは第28回「急げ!秀吉」(7月19日放送)で、小一郎(仲野太賀)に対して勝算は光秀にあると言い放つ役回りになった。
光秀と藤孝の関係は、二重三重に縁が深い。同じ足利義昭の幕臣出身という出自。娘・玉(のちのガラシャ)は藤孝の息子・忠興に嫁いでおり、姻戚でもある。光秀にしてみれば、畿内で最も頼りになる、いや頼りにしていいはずの相手だった。
だからこそ、本能寺の変の直後、光秀は真っ先に藤孝へ協力を要請している。娘婿の父に頭を下げてでも、味方に引き入れたかったのだろう。まあ、気持ちはわかる。「お前しかいないんだ」と縋りたくなる相手ぐらい、誰にでもいる。
光秀の要請に“頭を丸めて”応えた
それに対して、藤孝が返した答えは剃髪であった。「幽斎玄旨」と号して隠居し、家督も実務も忠興に丸投げするという無茶苦茶な方法で、この場を凌ごうとしたのである。しかも、父がこれなら息子もひどい。忠興はといえば、玉を丹後の山奥に幽閉している。
縁があるとはいえ、味方することもできない。そんな苦しい心情は理解できる。だとしても、頭を坊主にして逃げるというのが、ダサい。その後の光秀の末路をみれば「非情な現実主義者」とも「先を見通す目があった」ともいえるだろう。
でも、リアルタイムでは相当ダサい振る舞いだったはず。
いったい、なぜ、藤孝は光秀に対して中途半端な対応しかできなかったのか。息子の嫁の実家だから、情に絆されて割り切れなかった――そう説明したくなる。実際、後世の読み物の多くはだいたいこの筋で語ってきた。息子の嫁の父を、無下にはできなかったのだ、と。
しかし、もっと構造的な理由があったのではないか。藤孝が光秀に対して抱いていたのは、単なる「盟友への義理」ではなく、もっと厄介な、身動きの取れなさそのものだったのではなかろうか……。


