※本稿は、庵野拓将『科学的に正しい筋トレ大全』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
ジム入会者の96%が1年以内に通わなくなる
筋トレほどハイリターンな自己投資は、他には見当たりません。論理的に考えれば、筋トレは一生涯続けるべき最適解です。
しかし、データは残酷な現実を突きつけます。
フィットネス業界の統計や研究によると、ジムに入会しても半年以内に約50%が脱落し、1年後に継続できている人はわずか4%未満と言われています。
つまり、100人が「今年こそは!」と決意してジムの門を叩いても、1年後には96人以上が姿を消しているのです。
私たちは頭では「運動したほうがいい」と痛いほどわかっています。それなのに、なぜ仕事終わりのソファに一度座ってしまうと、二度と立ち上がれなくなってしまうのでしょうか。
その答えは、「意志が弱いから」でも「根性が足りないから」でもありません。
最新の科学が導き出した結論はシンプルです。あなたがジムに行きたくないのは、生物として「正常」だからです。
行動科学や心理学の分野では、健康に良いとわかっている行動ほど続かず、楽な行動を無意識に選んでしまう矛盾を「運動のパラドックス」と呼びます。
この謎を解くカギは、私たちの数百万年にわたる「進化の歴史」と、最新の「脳科学」に隠されていました。
ヒトは「省エネマシン」として進化した
ハーバード大学の進化生物学者ダニエル・E・リーバーマンは、著書『運動の神話』の中でこう断言しています。
「人間は、無駄なエネルギーを使わないように進化してきた」
旧石器時代のヒトにとって、カロリーは「貨幣」のように貴重な資源でした。いつ次の獲物にありつけるかわからない過酷な環境下では、目的もなく走り回ったり、重いものを持ち上げたりすることは、貴重なエネルギーの浪費であり、餓死のリスクを高める自殺行為に他なりません。
そのため私たちの祖先は、必要がないときは動かない(休息する)という戦略をとった個体だけが生き残り、その省エネ遺伝子が現代の私たちに受け継がれてきました。
つまり、現代の私たちが本能的にソファなどでゴロゴロするのを好むのは、怠惰だからではなく、優秀な省エネマシンとして進化した証なのです。


