「意志力」は使えば減っていく

ここまで、筋トレが続かないのは「性格」のせいではなく、人類が生き残るために獲得した「省エネ本能」のせいであることを解説しました。「なんだ、自分のせいじゃなかったのか」と安心した方も多いでしょう。

しかし、現実にはその強力な本能に逆らってジムへ向かわなければなりません。

「今日は仕事でクタクタだけど、なんとか行こう」

そうやって頼りにしてきた意志の力やセルフコントロール能力にさえ、実は私たちの想像を超える物理的な限界があることが、最新の研究で証明されたのです。

かつて心理学の世界では、「意志力は使えば減る」という自我消耗説が議論されていました。

一時は「本当か?」と疑われたこともありましたが、2024年の最新レビューや脳科学研究により、この説は再び「間違いのない事実」として復活しています。それどころか、「脳の一部が勝手に寝始める」という衝撃的なメカニズムまで明らかになったのです。

「意志力が減る」とき、具体的に脳の中で何が起きているのでしょうか?

2024年、この疑問に対して注目すべき研究結果が発表されました。IMTルッカ高等研究所のオルダリらが、人間が我慢や決断(セルフコントロール)を45分間続けると、脳に何が起こるかを調べたのです。

その結果、覚醒しているにもかかわらず、理性を司る前頭前皮質という部位において、深い睡眠時特有の脳波(デルタ波)の増加が確認されました。

つまり、長時間にわたり我慢や決断を強いると、脳全体は起きていても、理性を司る司令塔の部分だけが局所的にうたた寝をしてしまうのです。

夕方にサボってしまうのは脳が部分的に寝ているから

さらにこの研究では、脳がこの状態になると、性格が変わってしまうこともわかりました。前頭葉がうたた寝を始めたグループは、普段より攻撃的になり、他人に対して意地悪な行動をとる傾向が強まったのです。

これは筋トレにおいても重大な意味を持ちます。

仕事で長時間、決断や我慢を続けた後の脳は、物理的に「一部が寝ている」状態です。そんな状態で、「ジムに行く」という理性的な決断ができないのは、脳の生理現象として当たり前のことなのです。

夕方にサボりたくなるのは、あなたの性格のせいではなく、脳が部分的に寝てしまっているせいなのです。