いわば、そのスポーツのコアファンはお金を払ってでもスポーツコンテンツにアクセスするけれど、ライトファンは増えにくい状況に陥ることになる。スポーツイベントを主催するスポーツ団体には莫大なお金が入るのだろうが、スポーツの未来を考えた場合、その新規ファンの開拓は難しくなる。
人気のメジャースポーツは課金のネット配信、それ以外のスポーツはテレビ放送か無料のSNS(Social Networking Service)というすみ分けが進むかもしれない。
スポーツは誰のものなのか
最近、ちまたで耳にするのが、国民的関心の高いスポーツイベントを広く視聴できる「ユニバーサルアクセス権」である。これは、スポーツ文化が根付いている英国で1950年代に整備がはじまった。人気スポーツを「公共財」ととらえ、国民の関心の高いサッカーW杯やオリンピック、テニスのウィンブルドン決勝などをリスト化し、無料での放送が提供される必要があるとするものだ。
この権利は、ドイツやフランスなどのヨーロッパほか、韓国、台湾でも制度化されている。ただ、日本には、英国のように、「特別なスポーツは娯楽ではなく国民的な文化財」といった概念があるのかどうか。
ユニバーサルアクセス権や放送業界に詳しいスポーツプロデューサーの杉山茂さんは「現時点では、日本にはユニバーサルアクセス権は、ない」と言い切る。
「ようやく、論点整理などの議論が始まったところです。日本にスポーツ文化は公共財として、根付いているのかどうか。現状では、ユニバーサルアクセス権を保証すること自体、ナンセンスだと思います」
それでは、やはりスポーツ団体の社会的責任に頼るしかあるまい。競技を社会へ開くスポーツ団体には、タダでも人気イベントを視聴者に届ける使命があるはずだ。要は、収益とファン拡大のバランスだろう。
人気スポーツイベントは、どこまで有料化され、どこまで社会に開かれるべきか。ネット時代のスポーツ視聴方法は新たな岐路に立っている。普及を度外視してはなるまい、その権利を持つ国際スポーツ団体は一度、立ち止まるべきである。
【注】
(1)「サッカーとお金の話」『週刊サッカーダイジェスト』2014年5月13日号
(2)「サッカーワールドカップ放送権ビジネスの攻防」『スポーツ放送ビジネス最前線』2001年5月10日号 メディア総合研究所 花伝社
(3)「放映権料200億円の舞台裏」「AERA DIGITAL」(2022年12月1日付、2026年5月27日閲覧)
(4)【「見合うだけの投資だと判断」
(5)【WBC「視聴者3000万人超」


