地球温暖化が進む裏で、天然資源の争奪戦が繰り広げられている。「最後の火薬庫」となるのはどこか。著作家・宇山卓栄さんの書籍『「地理で考える」は武器になる』(秀和システム新社)より、一部を紹介する――。

温暖化で「勝つ国」「負ける国」

地球温暖化は、現代における最大の環境問題として語られます。

温室効果ガスの排出を減らし、地球の平均気温の上昇を抑えなければならない。この主張に反対する人はほとんどいません。メディアも教育も、温暖化を「人類共通の絶対悪」として扱っています。

しかし、地政学という視点においては、「絶対悪」も「絶対善」も存在しません。存在するのは、純然たる物理的な環境の変化と、それに伴う国家間のパワーバランスの変化だけです。

気温が上昇し、海面が上がり、気候帯が移動する。

これは地球という巨大な盤面で行われている陣取りゲームの「ルール」と「地形」が、ゲームの最中に書き換えられることを意味します。

地形が変われば、今まで有利だった場所が不利になり、今まで誰も見向きもしなかった辺境の地が一等地に化けることがあります。

つまり、温暖化は人類全体にとっては危機かもしれませんが、国家単位で見れば、明確に「勝つ国」と「負ける国」を生み出す巨大な富の再分配システムなのです。この不都合な真実から目を背けていては、未来の国際情勢を見誤ることになります。

「暑くて不快」どころか「住めない」

まずは、温暖化によって最も大きな打撃を受ける「負ける国」から見ていきましょう。直感的にわかる通り、それは「赤道直下の国々」と「海抜の低い島国」です。

赤道付近のアフリカ諸国、中東、南アジアの一部では、現在でも夏の気温が人間の生存限界に近づきつつあります。

これ以上気温が上昇すれば、どうなるでしょうか。

単に「暑くて不快だ」というレベルではありません。

農業が完全に崩壊します。熱波と干ばつによって作物が育たなくなり、慢性的な水不足に陥ります。

経済基盤の弱いこれらの国々では、エアコンなどの空調設備を全国民に行き渡らせることは不可能です。結果として何が起きるか。

「気候難民」の大量発生です。