トランプが北の辺境を本気で狙う理由
この「北の辺境が宝の山に変わる」という地政学的な変化を、最も露骨に象徴するエピソードがあります。
2019年、アメリカのトランプ大統領(当時)が、デンマーク領である「グリーンランド」をアメリカが買い取りたいと発言し、世界中を驚かせました。
2期目に入った2025年以降も、トランプ大統領は購入または支配に意欲を見せています。
グリーンランドは、国土の8割以上が分厚い氷床に覆われた、世界最大の島です。多くの人は「なぜあんな氷の塊を欲しがるのか」「大統領の気まぐれだ」と冷笑しました。しかし、地政学と資源の観点から見れば、これは極めて合理的で、先見の明のある戦略でした。
温暖化によってグリーンランドの氷が溶け始めている現在、その氷の下には、レアアース(希土類)をはじめとする莫大な未採掘の鉱物資源が眠っていることがわかっています。
中国vsアメリカの陣取りゲームが始まった
レアアースは、電気自動車やスマートフォン、そして軍事兵器の製造に不可欠な戦略物資であり、現在は中国が市場を独占しています。アメリカとしては、中国への依存を脱却するために、是が非でも新しい供給源を確保したいのです。
さらに、グリーンランドは北極海と大西洋を結ぶ戦略的な要衝に位置しています。氷が溶けて北極海航路が本格的に開通すれば、ここは世界物流の新たな中継地点となります。
実際に、中国はいち早くグリーンランドの資源開発やインフラ投資に名乗りを上げ、足場を築こうとしていました。トランプ大統領の「買収発言」は、中国の進出に対する強烈な牽制であり、北極圏における陣取りゲームの宣戦布告だったのです。
氷という「蓋」が外れた瞬間、グリーンランドはただの白い島から、大国が喉から手が出るほど欲しがる「地政学の一等地」へと変貌しました。

