明治維新による急速な近代化と独立の維持が成功したのはなぜか。新著『改訂版 超効率! 世界史年代サーキットトレーニング』(かんき出版)を上梓した予備校講師で世界史YouTuberの鈴木悠介さんは「幸運な国際情勢だけでなく、当時の日本自身に波を乗りこなす“圧倒的な底力”があった」という――。
和泉屋市兵衛画
和泉屋市兵衛画(写真=PHGCOM/ケルン東洋美術館で撮影/CC-BY-SA-4.0,3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

日本が長年培ってきた「異常に高い能力」

前編では、列強が勝手に牽制し合ったり自国の内戦で自滅したりと奇跡的な国際状況が重なったことにより、日本が列強による植民地化を幸運にも免れた経緯を解説しました。

しかし、ただラッキーなだけで日本が近代化を達成できたわけではありません。

日本自身にこの波を乗りこなすだけの「底力」があったのです。

1つめは、「江戸幕府が残した遺産」です。

例えば、日本には江戸300年の泰平の世で培われた「異常な基礎力」がありました。一説によれば、識字率は武士階級でほぼ100%、庶民でも都市部では70〜80%を超えていたと言われています。これは同時代のロンドンやパリすら上回る驚異的な水準です。

背景にあるのは、草の根の民間教育システムである「寺子屋」の存在です。都市から農村まで広く普及し、身分を問わず「読み・書き・そろばん」という基礎教養を叩き込んできた歴史がありました。

この「教育熱心な国民性」こそが、のちの急速な近代化を駆動させる最強のエンジンとなったのです。

また、参勤交代というシステムのおかげで街道や宿場町が整備され、地方の侍も定期的に江戸を行き来することで、各地域を結ぶ人的・情報的ネットワークも発達していきました。

さらに、「北前船」などの航路が整備されたことで統一された経済圏もありました。

つまり、日本は近代国家になるためのインフラが、すでに江戸時代のうちに完成していたのです。