東京都新宿区が、住宅宿泊事業(民泊)の規制を強化する方針を示した。東北大学特任教授で人事・経営コンサルタントの増沢隆太さんは「民泊は経済効果をもたらす一方で、周辺住民の生活環境を変化させ、一部では騒音トラブルやごみ問題に発展している。民泊を推進してきた行政は、問題が顕在化してから対応に動くだけでいいのか」という――。
野放しの民泊についに待ったをかける
全国有数の民泊集積地となっている東京都新宿区が、民泊規制に大きく舵を切る方針を示しました。新宿区は住宅宿泊事業について、住居系用途地域では新設を原則禁止し、商業系用途地域でも春・夏・冬休みの年間120日までに制限する方針を示し、さらに施行後2年間の経過措置を設けたうえで、既存施設にも適用するとしています。
アベノミクスの成果の一つとも言われるインバウンド需要が拡大する中、民泊は急速に普及しました。しかし、その施設の隣には、観光客ではない地域の人々が暮らしています。夜間の騒音やごみ、共用部分の利用、深夜の出入りなど、宿泊客にとっては一時的な行動でも、住民にとっては日々の生活環境にかかわる問題です。
新宿区によると、民泊のごみや騒音などに関する苦情件数は2022年度の60件から2023年度には299件、2024年度には561件、2025年度には924件と急増しました。
市場が拡大している時には、それを後押しすることのみ優先され、その副作用について十分に検討されないことがあります。
しかし、成長によって生じたリスクは、市場が拡大している間に消えてなくなるわけではありません。むしろ、問題が積み重なれば、やがて規制強化や行政対応という形で、地域社会に「後から来る請求書」として現れることがあります。

