街の強みを活かせばできたはずの対策

危機管理で重要なのは、トラブルが「起きるかどうか」を予言することではなく、「起きた場合にどうなるのか」をあらかじめ想定しておくことです。

どんなトラブルが起きそうか、起きにくくする対策、起きた際の対応体制、意識啓蒙教育などの手を、どこまで現実的に立てられるかが重要です。

新宿区は、歌舞伎町など巨大繁華街を抱え、地域外から来る客の行動やトラブルの実態への認知は豊富にあるように思います。在留外国人が全国有数の規模を占め、訪日外国人も数多く訪れるなど、外国人の居住・観光が集中する国際都市・新宿は、外国人による事業活動も活発です。

この知見を生かして、トラブルや摩擦を予期した対策や段階的に規制緩和をする。苦情などの定点観測で実態把握をして、課題が見つかれば機動的に対応するための基準を設定しておくなど、取組み前にできることはあったのではないでしょうか。

新宿歌舞伎町
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです

行政への「請求書」は必ず届く

しかし、大阪市や京都市のように、実際には問題が顕在化してから行政が対応に動くケースが多いのが実情です。

もちろん、問題が発生した後に規制を見直すこと自体は、行政にとって必要な対応です。大阪市や京都市の対応も、実態把握を踏まえた合理的な判断だと言えます。ただし、成長を促す政策では、成長そのものだけでなく、その先に発生する社会的・行政的なコストまで、政策の初期段階から視野に入れておく必要があります。

苦情データの定点観測や、規制見直しの基準をあらかじめ明文化しておくといった仕組みは、その一助となるはずです。

「後から来る請求書」を見ないまま進んでも、いずれ請求書は届きます。投資コストの最適化のためには、結果が出てから修正するより、予見できる手はあらかじめ打っておき、後からの調整のアローワンス(許容範囲)も織り込んでおくほうが有効なはずです。

新宿区の方針転換は、民泊の是非だけでなく、成長政策において「後から来る請求書」を誰が、いつ、どのように見積もるのかを考える機会となっています。

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