問われるのは「どこまで予測できたか」
新宿区と同じような動きは全国で起きています。
大阪市でも、民泊施設の増加に伴って周辺住民とのトラブルや苦情が増加し、市は「大阪市迷惑民泊根絶チーム」を設置しました。その後、市内の特区民泊施設を対象に営業実態調査を進め、2026年5月には国家戦略特区法に基づく特区民泊の新規申請受付を終了しています。また、京都市でも、住宅地と工業用地での民泊の新規開業を事実上禁止とする方向で議論が進んでいます。
大阪市の特区民泊認定施設が急速に増えた後、行政が実態調査や規制強化に動くという経過からは、成長のスピードに対して行政の対応が後追いになっていなかったか、という問題が浮かびます。
京都市でも、民泊をめぐる住民からの通報は増えています。京都市の資料によると、民泊通報・相談窓口への「通報」は2024年度の244件から、2025年度は4〜12月までの9カ月間ですでに264件に達しました。騒音やごみに関する通報は増加傾向にあるとしています。
こうした対応の強度の差は、単純な自治体ごとの姿勢の違いというより、各地域における民泊施設の集積度や、問題が顕在化してからの経過時間の違いを反映していると考えられます。
ここで問われるべきなのは、「民泊を認めるべきだったのか」という単純な二択ではありません。むしろ、民泊による経済効果を取り込みながら、地域住民への影響をどこまで事前に予測し、制度や規制に織り込めたのかという点です。
自宅の敷地内に侵入されるという事例も
民泊問題を考える上で重要なのが、「リスクの非対称性」という視点です。
民泊によって経済効果が生まれる一方で、その周辺で暮らす住民が同じように利益を受けるとは限りません。観光客にとっては便利な施設でも、近隣住民にとっては、深夜の騒音やごみ、見慣れない人の出入りなどが生活上の負担になっている可能性があります。
実際に民泊利用者によるゴミが放置され、結局近所の住民が悪臭などの被害を受けたり、スーツケースを夜中にガラガラと騒音を立て、そのスーツケースをそのまま放置されてしまう事例があります。
週末夜間から深夜にかけて音楽を大音量で流しながら、複数人で騒ぐ例もよく見られます。仲間を呼んでパーティーをしたり、庭やマンションのエントランス、ベランダなど、共用部分で飲酒や喫煙(ポイ捨て)なども、静かな住宅地では目立ちます。
その他にも、宿泊者が間違えて自宅の敷地内に入ってきたり、インターホンを押される、といった被害もあります。近隣住民の中には自費で防音対策をする方もいれば、民泊事業者に連絡しても「営業妨害」と脅迫されたというケースもありました。

