上司の雑な指示にどう対応するか。起業家の川岸宏司さんは「言語化力の足りない上司の真意を見極めるには、『何が正解か』ではなく『何が不正解か』を明らかにできる質問を投げるといい」という――。

※本稿は、川岸宏司『なぜ、あの人の言葉は心に響くのか』(大和書房)の一部を再編集したものです。

上司と部下
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まずは自分の感情を飼いならす

会議で上司にこう言われたとします。

「この企画、全然ダメだね。やり直して」。

準備に3日かけた。中身を見てもいない。何がダメなのかすら言わない。当然、腹が立つ。帰り道に頭の中で繰り返すのは「あいつ、なんなの」という一言。

愚痴って発散するか、黙って飲み込むか。どちらにしても、何も残らない。

でも私はある時期から、この瞬間を「言語化のトレーニング」に変えるようになりました。

方法はシンプルです。「なぜあの人は、あんな言い方をしたのか」を、相手の立場から本気で考える。私はこれを「完全憑依」と呼んでいます。

「なぜこの人は、こんな言い方をしたのか?」

そもそも、怒りはほかの感情と性質が違います。

悲しみは「自分が傷ついた」と認めた上で生まれる。不安は「わからない」と自覚した上で生まれる。でも怒りだけは、「自分は正しい」と確信した状態で発火します。

私自身、20代前半まではよく怒っていました。理不尽な取引先、筋の通らない上司。正義の味方のつもりでブチギレていました。しかも、怒っている本人には自覚がない。

悲しみや不安の感情には名前をつけられても、怒りには名前をつける気にすらならない。

悔しさに拳を握りしめる部下
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だからこそ、視点のスイッチが要ります。自分から、相手へ……の切り替えです。

上司の「全然ダメだね」に、相手側から入り込んでみます。なぜこの人は、こんな言い方をしたのか。仮説を3つ、頭の中で並べる。

1.この人自身が、さらに上からプレッシャーをかけられていて余裕がなかった
2.企画の方向性が、まだ共有されていない経営方針とズレていた(でも方針自体を部下には言えない立場だった)
3 .そもそも言語化が苦手で、「ダメだね」以外の語彙を持っていなかった

3つ目を考えたとき、「あの人、感情の言語化ができていないだけでは?」と、ちょっと笑えてきませんか?