※本稿は、九和律(9割が知らない雑学)著、齋藤勝裕監修『生命・地球・植物・動物・宇宙をめぐる46億年の物語 科学の教養大全』(Gakken)の一部を再編集したものです。
なぜ人間はわざわざ運動するのか
突然ですが、皆様は昔の人類というものを知っていますか?
たとえば縄文時代はおよそ1万年ほど続きました。縄文人は1万年間土器を作っていたわけです。1万年も生きて、土器て。文字ぐらい作らんかい。縄文人、お前もう人間降りろ……とか思っている人は、宇宙人も地球人に対しておそらく同じことを思っていることを忘れてはいけません。チンパンジーと別れてから約700万年も生きて、まだ戦争て。地球人、お前もう知的生命体降りろ、とね。
さて、ということで現代人からすると、昔の人の行動には色々奇妙な点を感じるわけですが、逆に昔の人からしても、現代人の行動は奇妙に見える点があります。
それが、運動です。わざわざエネルギーを消費するなんて愚の骨頂です。とても自然界で生きていけるとは思えません。野生動物がサバンナで筋トレをしているところなんて、見たことがありません。
ヒトは健康になりたい! と思いながらも、ゴロゴロしてテレビを見るような不健康なことが好きで、筋トレやジョギングのような健康に良いことが嫌いなのです。果たしてこれは、なぜなのでしょうか? 生物として矛盾しています。
1日24km歩くサバンナの狩猟採集民族
2009年の話です。人類学者であったハーマン・ポンツァーは、アフリカの赤道直下のタンザニアという国に住む、ある先住民たちの調査を行っていました。
彼らはタンザニア北部のサバンナに住んでいる、ハッザ族と呼ばれる人たちです。
ハッザ族は、狩猟採集民族であり、農耕や牧畜を行いません。毎日己の肉体を使い、食料をすべて自然から調達します。
女性たちの多くは、子どもを背負いながらベリーを集め、芋を掘り出します。男性たちは木の枝と動物の腱で出来た弓や斧を使って、シマウマやキリンを狩りに行きます。「一狩り行こうぜ」のレベルが高過ぎますね。サバンナの中で獲物を探し回る彼らの1日の運動量は、平均的欧米人の1週間以上に上り、男性であれば1日24kmほど歩いていました。
1日5km走っているだけですごいと言われる現代人のレベルではありません。
その当時、彼らのような狩猟採集民族の1日のエネルギー消費量は知られていませんでした。そこでハーマンは、彼らのエネルギー消費量を注意深く計測し、ある事実が明らかになったのです。

