※本稿は、松村一志『科学否定論はなぜ人をひきつけるのか―地球平面説から反ワクチンまで』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。
YouTubeで急増した“地球平面説”
情報学者ジョン・C・パオリロの調査によれば、地球平面説を擁護する動画がYouTubeに出始めたのは2011年頃からだが、それらが定着したのは、2014年から15年にかけてである。
この時期、地球平面説の動画をアップロードするYouTuberが急増した。そのうちの一部は、他の陰謀論との結びつきを深めていく。
今日の平面論者の間では、地球の写真や月面着陸の映像をNASAの工作に見出す陰謀論が一般的だが、それに加え、アメリカ同時多発テロ事件が実はアメリカ政府の自作自演だとする9.11真相究明運動や、政府が実はディープ・ステイト(闇の政府)によって操られているとするQアノン陰謀論を支持するラディカルな平面論者が出てきたのである。
こうしたことが起きるのは、陰謀論において、陰謀を企む集団同士が裏でつながっていると考えることも珍しくないからだ。ただし、平面説が他の陰謀論を取り入れる一方で、他の陰謀論はしばしば、平面説を荒唐無稽なものとして馬鹿にしてきた。一口に「陰謀論」と言っても、その判断は一枚岩ではない。
アメリカ成人の16%が「地球は球体」に同意せず
2017年からは、地球平面説国際カンファレンスも開催される。平面説の存在が多くの人の目に留まるようになったのは、この頃である。カンファレンスには、賛同者だけでなく、ジャーナリストや研究者も参加しており、その様子が報じられた。
例えば、ドキュメンタリー映画『ビハインド・ザ・カーブ』には、映画の主役とも言える平面論者マーク・サージェントが、2017年のカンファレンスで行ったスピーチの様子が収められている。
もう一つ注目を集めたのが、質問紙調査の結果だった。国際的なリサーチ会社YouGovが2018年にアメリカの成人8215名を対象に行った調査では、「地球は球体である」という考えを信じる人は84%に留まった。もちろん、平面論の信奉者はもっと少ないが、球体説を疑う人が予想以上に多いことが、驚きを持って報じられたのである。
ただし、平面説の広がりは、アメリカに留まらない。ブラジルの世論調査会社Datafolha Instituteが16歳以上のブラジル人2086名を対象に行った調査では、7%が「地球は平面である」と信じていた。さらに、英語圏で動画やポッドキャストが登場したことで、日本でも、英語を理解する人々を介して、地球平面説が紹介されるようになった。

