根拠は聖書、疑似科学、陰謀論
ここまで、地球平面説をめぐる活動の変遷をまとめてきた。しかし、そもそも平面説とはどのような考え方なのか。
地球平面説のモデルにも細かなバリエーションがあるが、その基本形は次のようなものだ。フラットアース(平面地球)は静止した円盤で、その中心に位置するのが北極である。一方、円周上には南極大陸がぐるりと高い壁をなしており、その壁の外側は不明である。
また、平面全体がドーム状の天球で覆われており、太陽・月・星はその天球上を動いている。ただし、太陽の光は平面全体を照らすのではなく、あくまでも懐中電灯のように一部分だけを照らしている。これにより、日の出や日没が生じるという。
重要なのは、これが「論証」の形で示されることだ。その論証には、「聖書の証拠(scriptural evidence)」と呼ばれる聖書からの引用もあるが、それを除けば、地球が平面であることを示す「疑似科学」と、球体説を流布する主体を見出す「陰謀論」とからなる。そのため、聖書直解主義者以外にもアピールする議論になっている。
なぜ疑似科学と陰謀論が結びつくのか
例えば、ロウボサムは『探究的天文学――地球は球体ではない!』(第二版、1873)の中で、平坦な運河で行った観察を紹介している。それによると、水面から8インチ(約20センチメートル)の高さに目線を置いたところ、6マイル(約10キロ)先に立てた5フィート(約1.5メートル)の旗が見えた。
地球が曲面だとすると、旗は地平線よりも下に沈み込んで見えなくなるはずだが、そうならなかったのは、球体説が間違っているからだという。
この理屈自体はわかりやすいが、光の屈折が考慮されていない点に問題がある。蜃気楼を考えるとわかるように、光は大気の密度差によって屈折する。そのため、条件次第で、本来より遠くまで見えたり、より近くしか見えなかったりする。
そもそもこの観察が本当なのかどうかも疑わしいが、仮に本当だとしても、球体説がただちに棄却されるわけではない。こうした通常の解釈からすると、この観察を根拠に平面説を支持するのは疑似科学に当たる。
一方、球体説が広がったのは、地位の高い科学者たちが人々を欺いてきたからだとされる。こちらは、現実の背後に集団的な意図を見出す点で陰謀論に当たる。

