ハリウッド映画も“平面説”の根拠に…

その後の地球平面説は、疑似科学と陰謀論のレパートリーを増やしてきた。最も大きいのは、NASAをめぐる陰謀論だろう。20世紀後半に進んだ宇宙開発を通じて、丸い地球の写真や月面着陸の映像が流布されてきた。

アポロ11号の月着陸船パイロットとしてニール・アームストロングに続き人類史上2番目に月面に降り立ったバズ・オルドリン
アポロ11号の月着陸船パイロットとしてニール・アームストロングに続き人類史上2番目に月面に降り立ったバズ・オルドリン(写真=Neil A. Armstrong/PD NASA/Wikimedia Commons

そのため、この時期以降の地球平面説には、写真や映像をNASAによる捏造だとする説明が追加された。つまり、平面説は、月面着陸がスタジオで撮影されたものだとするアポロ計画陰謀論(ムーン・ホークス説)を組み込んだのである。

この陰謀論に信憑性を持たせたのが、ハリウッド映画だった。アポロ計画の只中に公開された映画『2001年宇宙の旅』(1968)をはじめとするSF作品は、月面着陸の映像が特撮にすぎないとする根拠になった。また、『カプリコン1』(1977)は、月面着陸の映像が捏造されたという設定で、NASAによる隠蔽工作がスリリングに描かれるため、「真実」を語る映画だと捉えられてきた。

しかし、この点で言うと、地球平面論者でさえも実は安全でない。例えば、地球平面協会の活動には、平面説のイメージを落とすための「偽旗作戦」ではないかとの嫌疑がかけられてきた。

「偽旗作戦」とは、攻撃を受けたと見せかけることにより、相手を攻撃する口実を作ることを指す軍事用語である。この批判は、地球平面協会だけでなく、影響力のある平面論者に対しても、しばしば投げかけられる。

地球が平面だとすると、球体説を流布した犯人がいると考えざるをえない。こうして、地球のモデルをめぐるせめぎ合いが、悪意に満ちた社会というイメージへとつながっていく。疑似科学と陰謀論が結びつくのは、このためだ。

論破マニュアル「200の証明」が登場

19世紀と21世紀の平面説を比べると、「論証」のレパートリーの変化をはっきりと見て取ることができる。1885年には、印刷業者カーペンターが『地球が球体でないことの100の証明』という冊子を刊行していた。その名の通り、球体説の「論駁ろんばく」を100パターン集めたものである。今風に言えば、「論破」のマニュアルと言っても良い。

この冊子の出版から130年経った2015年には、YouTuberのエリック・デュベイが、「地球が回転するボールでないことの200の証明」という動画を出したが、そこでは200パターンがテンポ良く解説されていく。これを見て平面説に転向した人も多いという。

例えば、デュベイの動画では、次のような「証明」(=反証)がなされている。オリジナルの動画は残っていないが、一つ一つについて詳細な批判をつけた『FlatEarth.ws』というサイトでも、その内容を確認することができる。

(a)もし地球が回転しているのなら、ヘリコプターや気球は、空中で待機しているだけで、目的地に到達できるはずだ → 慣性の法則に反する

(b)もし重力が海や建物や人々や空気を引き付けるほど強い力なら、鳥や昆虫や飛行機はなぜ自由に飛ぶことができるのか → 揚力は重力より大きくなりうる

(c)船舶や飛行機が北極・南極を通って周航したことはない → 何度も行われている

(d)NASAによる地球の写真には加工の形跡が発見された → JPEG形式で保存した際に画像が劣化した等の可能性がある