※本稿は、野澤千絵『マンション高騰の真実 都市部の「非居住化」が街を壊す』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
「住まない買い手」の増加
非居住の個人・法人による所有(以下、非居住所有)の拡大は、マンション管理にも大きな影響を及ぼす危険性があります。なぜなら、日常的にそのマンションに住んでいない所有者が増えれば増えるほど、漏水などの問題発見が遅れたり、管理組合の運営に支障が生じやすくなるからです。たとえば、理事の担い手を確保しにくくなる、所有者同士の連絡や意思疎通が取りづらくなるといった問題が起こりえます。また、マンション管理に対する意識や関心の度合いが、居住者と非居住所有者で大きく異なることも珍しくありません。
実際、マンション管理会社からは、都心部のタワーマンションで居住目的ではない所有者が半数を超え、管理組合の総会が定足数を満たせず、総会そのものを開催できなかったという報告(※1)もあります。
※1 神戸市「居住と税制のあり方に関する検討会」第3回資料(2025年11月5日)
もし「実際に住んでいる人」が半分以下なら…
新築マンションでは、他の住戸がどのような人に売られたのか、つまり、そのマンションに日常的に住む人がどれほどいるのかは、実際に入居が始まるまでわからないケースが一般的です。ですが、もし自ら住むために買ったマンションで、実際に住んでいる区分所有者が半分にも満たなかったとしたら、どう感じるでしょうか。筆者なら大きな衝撃を受けますし、購入を後悔するかもしれません。管理規約の内容によっては、実際に住んでいる区分所有者に管理組合を運営する負担が過度に集中したり、管理そのものが不安定になったりするおそれがあるからです。
区分所有マンションをめぐっては、所有者の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」を背景に、合意形成を進めやすくしようと、2025年5月、区分所有法などの大幅な改正が成立し、2026年4月1日から施行されています。
具体的には、日常的な管理事項に関する決議には「出席者ベースの決議要件」が導入されました。これまでは、総会を欠席した人も含めた全区分所有者を分母として賛否の割合を計算していたため、欠席者が多いマンションでは、決議に必要な賛成数に届かず修繕や管理に関する決議が進まないケースという問題が生じていました。

