「住みたい人」の手にわたりにくくなる
近年、地方都市でも、駅前などで市街地再開発事業を活用したタワーマンション建設が増えています。とりわけ地方では、市街地再開発事業は「公共性が高い」ものと位置づけられ、補助金、容積率の割増し、税制優遇などの支援措置を受けながら進められるケースが少なくありません。一方で、再開発で建設されるタワーマンションは、昨今の工事費上昇の影響で販売価格を高く設定せざるをえない側面があります。こうして高額な住宅になればなるほど、一部の富裕層や法人にしか手が出ない物件になり、ますます値上がりし、「住みたい人」の手にわたりにくくなっていきます。
大半の売主が購入者属性を公表していないため、なかなか全体像を把握できませんが、地方の主要都市でも、再開発によって供給される住宅の多くが、そこに「住む人」のためではなく、「住まない買い手」が保有する場になっていく可能性があります。
神戸市の大規模調査で判明した実態
「非居住の個人・法人による購入・所有が進んでいる」と述べると、「サンプル数が少ないのではないか」「特殊なマンションだけを見ているのではないか」という疑問を持つ読者もいるでしょう。
そこで神戸市が実施した市内の区分所有タワーマンション53棟・1万1216戸に対する大規模な所有者調査を見てみましょう。神戸市がこうした大規模な調査をしたのは、市内にあるタワーマンションの特性を客観的に分析し、課題やリスクの洗い出し、将来的な行政コストとその負担のあり方を検討するためでした。
この調査結果によると、市内53棟のタワーマンションでは、当該マンション以外の住所となっている非居住所有が全体で約4割を占めていることが明らかになりました。そして、階層が高くなるほど割合は上昇し、40階以上の高層階では6割近くが非居住所有となっていたのです(図表1)。
この調査は、「新築時に誰が購入したのか」を直接示すものではありませんが、神戸市都心部のタワーマンション高層階では、自らが居住することを前提としない取得が相当数含まれていると考えられます。具体的には、賃貸経営、転売、節税対策、セカンドハウス、親族居住、企業の顧客用ゲストハウスなど、日常的な自己居住とは異なる目的で取得された住戸が少なくないとみられます。

