スシローで皿を積み上げる中国の若者たち
皿が、1枚、また1枚と重なっていく。
食べ終えた寿司の皿を塔のように重ね、その高さを比べてどれだけ平らげたかを競う。中国の若者の間でいま、日本の回転寿司チェーン「スシロー」を訪れ、「スシロータワー」と呼ばれる皿の山を築く動画が大流行している。
60枚、そして80枚を超えることも。高く重ねた皿の前でスマートフォンを構え、崩れそうになるたびに歓声があがる。その一部始終を収めた動画がSNSに投稿されていく。
ぐらぐらと揺れる皿の塔を映しただけの動画が視聴者を魅了しており、ある7秒のショート動画は、中国国内版TikTokに当たる「抖音(ドウイン)」で約200万件の「いいね」を集めた。ブルームバーグによると、こうしたバズ動画は中国の生活情報SNS「小紅書(シャオホンシュー)」にも広がり、若い中国人が国内のスシローに押し寄せているという。
こうした熱狂は、日中間の政治摩擦などまるで存在しないかのようだ。
入店まで14時間、順番は転売される
昨年11月、高市早苗首相が台湾海峡で有事が起きた場合の自衛隊展開の可能性に触れた。中国政府はすぐさま反発し、国民に日本への渡航を控えるよう呼びかけた。日中を結ぶ空の便は激減した。
香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストは、6月23日時点の数字として、中国側が今年に入って欠航させた日本向けフライトが約9000便にのぼると報じている。この夏の日中路線は、政治的な摩擦に加えてビザ手数料の引き上げも影響し、前年比57%減にまで縮小した。2023年にさかのぼれば、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出をめぐって中国が日本産水産物の輸入を全面的に止めたことも、まだ記憶に新しい。
それでも、若者たちはスシローに列をなす。
習近平政権が意図する日本への“経済制裁”をよそに、国民一人ひとりは「食べたい」「楽しみたい」という好奇心に素直だ。
スシローが広州に中国1号店を開いたのは2021年。その後、人気に本格的に火がついたのは、昨年末のことだった。
上海への出店時には約700組が店の前に詰めかけたと、ブルームバーグは報じている。最長14時間待った客もいたという。
今でも人気は衰えていない。広州や深圳といった大都市では、週末になると200〜500組待ちが当たり前になった。繁華街で若い客が5時間並ぶことも珍しくない。ついにはフリマアプリで転売屋に約30元(約720円)を払い、順番を買う客まで現れた。


