政府の決定は尊重、でも食事は別

なぜ中国の消費者たちは、日中対立を気にしないのか。若者たちに聞いてみると、ほぼ同じ答えが返ってくる。

昨年12月、福建省出身の22歳の男性は、デリケートな話題であるためオスカーという英語名を名乗った上で、ブルームバーグの取材に応じた。台湾有事での自衛隊派遣の可能性に触れた存立危機事態発言の余波で、日中の緊張が高まっていた時期だ。

「政府の決定は尊重します。でもこれは政治じゃない。ただ食事をしているだけですから」

にぎわうスシローで席につきながら、オスカーはさらりとそう言った。

23歳の大学生、エディス・シャオさんも同じだった。北京のモールで30分以上並び、スシローに入った。漫画・アニメ『ちいかわ』のファンでもある彼女は、AP通信の取材に対し、「おいしいし、食材の品質も信頼できます」と語る。

日中関係の冷え込みが日本文化や日本食の消費に影響したかと聞かれると、「あれは指導者の発言です。国民みんなの気持ちまで変わったわけじゃない」と言い切った。

南部・深圳に住む24歳の男性、ダンソン・デンさんも、政治への関心は薄い。ほぼ週1回のペースでスシローに通い、1度の食事で25皿ほど、約200元(約4800円)を使う。

実は北京の店舗では今年に入って、食の衛生問題が報じられた。だが、食品トラブルの話はネットにあふれていて、「人々はある程度慣れている」とダンソンさんは言う。ブルームバーグの取材で彼は、お気に入りの季節限定フォアグラ牛肉寿司を挙げ、8元(約190円)という価格を「破格だ」と評した。

コスプレとグッズ販売が一斉禁止に

もっとも、政府の圧力がかかっている分野もある。イベントや公演など、行政の目が届きやすい場では、日本のポップカルチャーへの締めつけが強まっている。

今年2月、北京・重慶・蘭州のアニメイベントで、人気アニメ『名探偵コナン』のコスプレとグッズ販売が一斉に禁止された。

ひび割れたコンクリートの壁に描かれている、五星紅旗と日章旗
写真=iStock.com/masterSergeant
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マレーシアの英字全国紙のスターは共同通信の報道を引き、きっかけは『名探偵コナン』30周年と『僕のヒーローアカデミア』10周年を記念したコラボだったと伝えている。『僕のヒーローアカデミア』は、敵キャラクターの名前が旧日本軍「731部隊」による人体実験の被験者を指す隠語を連想させるとして、2020年に中国で配信停止になった作品だ。作品間のコラボが「中国人を侮辱するもの」であるとして、現地で反発が広まった。

一方で重慶では、今年1月に靖国神社でのポケモンカード大会が企画されたことへの反発から、ポケモンのコスプレやグッズ販売まで禁止された。イベントはその後、中止になっている。